タマス・ウェルズに並ぶ才能を持つオージーSSW新作
メルボルンのシンガー・ソングライターGrand SalvoことPaddy Mannが間違いなくオーストラリアを代表する才能だということは、約1年ぶりの5thアルバム『Soil Creatures』が証明していると思います。
本人が演奏するピアノ、シロフォン、グロッケンシュピール、ベースやドラムの他に、ゲストミュージシャンによるヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、ハープ、フレンチ・ホルンなどさまざまな楽器によるゴージャスとは正反対の意味で豊潤なアンサンブルは繊細で美しい。
純粋にソングライティング能力だけで言えば、ひょっとしてタマス・ウェルズより上なんじゃないでしょうか。コーラスを用いたゴスペル・ソングから、シンプルなフォーク・ソングまで、極めて静謐なアレンジのせいか、Paddyの歌はとてもスピリチュアルに聴こえ、タマスのようなエンジェリック・ボイスとは違った神々しさすら感じられます。タマスよりもずっと地味ですが。
前作はそのものずばりな『Death』というアルバムを作っていた彼の興味もまた「悲しみ」と言っていいでしょう。安らかなサウンド、詩的なリリックの端々にフラジャイルさを感じさせます。
「Soil Creatures」というアルバム・タイトルは、ブックレット中に書かれているとおり、つまり「nothing dies here it just changes form into something rich and rotten (strange)」という意味でしょう。大地に生まれ、大地に帰っていく、ということ。なんだか老荘思想的です。
個人的にはmyspaceでも聴ける「Needles」の冒頭の、「she wears a dress like a song wears a voice」というすてきな表現に想像力をかき立てられます。
キャッチーさのかけらもありませんが、聴けば聴くほど味が出る最高のスルメ・アルバム。少なくとも、ぼくにとってはタマス・ウェルズ同様とても大切な1枚になりそうです。
最後に、イタリア人アーティストGiuseppe Ielasiによるマスタリングの巧みさを褒め讃えたいと思います。
Grand Salvo myspace
p*dis : Grand Salvo – Soil Creatures 詳細ページ
Tags: Grand Salvo
This entry was posted on 2009年 9月 1日 at 18:09 and is filed under disc review. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.