なつのおもいで ~ soso Japan Tour 2007 ~
ツアーの後はいつも燃え尽き症候群になる。タマス・ツアーからsosoツアーまで
わずか2週間しかなく、むしろsosoたちが少し前乗りしたため、
実質的に1週間余りしかなかった。猛暑とストレスで消耗した心身は衰弱し、
ゆっくり休む余裕もなかったので、回復するわけもなく、
sosoのツアー前は本当に体調が悪かった。
9/4、sosoことトロイと、maybe smithことコリンが日本着。トロイは写真の
印象よりもかなりおっさん。コリンは写真ではいかにもオタク青年だけど、
実際はもっと男っぽかった。そして、二人ともテンションが高い。
体調不良の身にはそれがとてもつらかった。初日はたまたま日本に来ていた
noyz319夫妻と食事をし、翌日は美術館に行きたいと言ったので、
ホテルから近かった新国立美術館へ。夜にはふたりを神宮球場での
ヤクルトー広島戦に連れて行った。それがプロフェッショナルなベースボールを
観たことがないという彼らが生まれて初めて見たプロ野球だった。
▲カナダ人はエアコンの下がお好き
大型の台風が関東を直撃するということを知ったのは彼らが日本に着く当日のことで、
当初は初日の大阪公演の当日に大阪入りする予定だったのを変更して前乗りすることに。
そして、宿泊費を浮かす意味でも、兵庫県西部にある実家に泊めることを半ばノリで
決定。すぐに親を説得(笑)というわけで、いつ止まるかも分からない不安と
戦いながら、実家に到着したのは9/6の20時のことだった。
調理師免許と栄養士免許を持つ母は、トロイがベジタリアンだったため、
自慢の料理の実力を完全には発揮できないと怒っていたが、
それでもベジタリアン向け和食コースを苦労して作ってくれた。
初めて食べる日本の家庭料理に大いに感動した彼ら。
トロイの弟は「SUSHIRO」という寿司レストランをサスカトゥーンで経営していて、
弟の嫁が調理を担当しているそうだけど、彼女に食べさせて勉強させたいとまで
言っていた(笑)コリンは「いままで食べたなかで最高の料理だった」と絶賛。
我が母の機嫌は最高潮。食後も宴会は続き、飲み比べをするために買った無数の種類の
ビールを次々に飲み干して行くトロイは、酔っぱらい以外の何者でもない。
ベジタリアンのくせにおなかが出ているのは、間違いなくビールの飲み過ぎだろう。
▲実家にて/ものすごい違和感(笑)
▲食事中
▲阪神タイガースのサヨナラ勝ちを鑑賞
9/7、ツアー初日の大阪公演。どのアーティストでもライヴを生で観るまでは不安を
感じるけど、この人たちもリハを聴いただけで鳥肌が立つほど素晴らしかった。
諸々の事情により、ふたりの出番が18時前からというかなり早い時間だったため、
なかにはせっかく来てくれたのに彼らのライヴを観れなかったという方たちもいたようで、
本当に申し訳ない気持ちになった。日本での初めてのライヴは、演奏した6曲のうち、
5曲が新曲だったため、オーディエンスはうまく反応できないように思えた。
その時、初めて聴くのだから無理もないだろう。それは他の公演でも顕著だったけど、
この日、最後に演奏した「Finding Out About a Big Pile of Stones」の反応の良さを
思えば、新曲プレゼンのセットは少し敷居が高かったのかもしれない。
出番が早かったせいで、その後はビールを飲み続け、ファンと交流したり、
僕の友人の女の子にセクハラまがいのことをし、そして、当然僕もからみにからまれた(苦笑)
あと、トロイのepicの物真似は最高だった。
▲最寄り駅にて/はしゃぐトロイ、苦笑するコリン
▲大阪公演
9/8、渋谷O-nest公演。前日の反省もあり、セットリストを変更するようにアドバイス
したところ、渋々ながらも承諾してくれ、新曲に昔の曲を混ぜたセットとなった。
今回のツアーでほとんど初めて聴いたmaybe smithのサウンドは、grandaddyを
意識したローファイ・ポップで、sosoを聴きに来たファンには決してアピールしないのでは
ないかと思えたけど、この日はとても盛り上がっていた。ステージ上をウロウロするため、
せっかくビデオを撮影していたのに、フレームから外れることしばしば(笑)
ちなみに、ツアー後、彼のCDを聴いたところ、ライヴからは想像できない完成度の高さで、
とても素晴らしかった。
そして、soso & maybe smith。
この日はオーディンスの雰囲気が本当に素晴らしく、前日ではすべり気味だった
「サワゲ!」(騒げ!)というような日本語のMCも受け入れられたため、
彼らもリラックスしながら、本来の力を発揮できたようで、最高のパフォーマンスとなった。
sosoがターンテーブルとヴォーカル、そしてmaybe smithがシンセとサンプラー、
ギターを担当したライヴセットは、昨年のカナダツアー以来、
このセットで培ってきただけあって、ふたりのコンビネーションは熟成されたものだった。
新曲をライヴで披露するのはこのツアーで2回目のことだったけど、初日はともかく、
この日はもう何年もやってきたような安定感すら感じさせる充実のパフォーマンスだった。
sosoのワンターンテーブルの使い方は、どちらかというと装飾的なイメージで、
やはりこの人はヒップホップとどこか距離を置いているようにも感じた。
前半のmaybe smithとのセットから一転、後半はカラオケ状態で昔の曲を連発。
「it goes」が最高潮だっただろうか。
そのゆるすぎるノリに誰もがハピネスを感じたような会場の一体感に目頭が熱くなる。
ライヴとしてのクオリティーは前半のセットの方が抜群に良かったけど、
後半はいわばファンサービスのようなものだ。
個人的には「sweet euphemisms」のピアノにはやはり震えた。
そして、すでに新曲を数え切れないほど聴いていた僕にとってしてみれば、
sosoのファルセットボイスを聴くたびに胸が痛くなっていた。
やはりツアーをやって、誰よりも楽しめる立場にあるのは僕なのだ。
▲東京公演
9/9、名古屋公演。ツアーファイナルということだったが、疲労のせいもあって、
朝からずっと二人とも静かだった。ただし、パフォーマンスはとても気合いが入ったもので、
最後のライヴを楽しんでいるようだった。
ライヴ会場のK.D Japonの雰囲気をとても気に入っていた。
トロイがベジタリアンのため、名古屋名物を何も食べれなかったのはとても残念だけど、
ライヴ後はビールをしこたま買い込んで、ホテルで三人で打ち上げ。
ちょうど9/10が誕生日だったコリンを祝う。二人は年齢差はあるものの、
本当に仲がよく、「僕らはゲイのカップルで、日本にはハネムーンに来たんだ」とか
ジョークを飛ばしていた。ツアー前半の体調不良もあって、
僕は割と静かにしていたのだけど(元々静かだけど、さらに)、
僕のテンションをあげさせるために、「Get amped!」とやたら言っていた。
仲間のあいだでよく言っている言葉で、ようは「エキサイトしろよ」ってことだけど、
いつのまにかツアーのキーワードのように何度も何度も言っていた。
ライヴ中、ステージ上でも「Get amped, sin!」と言っていたけど、
そんなこと言われてもどう反応していいか困る(笑)
というか、オーディエンスにとっては何のことか分からなかっただろう。
▲名古屋公演
作ってる音楽自体はとても暗くて悲しいものなのに、実際の彼の人間性は明るくて
フレンドリーだったから、そのギャップが不思議でしょうがなく、
彼の音楽ににじむ悲しみがどこから来るのかと疑問に思っていた。短い間だったけど、
共に時間を過ごして行くうちに知ったのは、彼が10年ほど前に病気で生命の危機を
抱えていたということだ。
10年前というと、彼がちょうど音楽を作り始めた時期と重なり、そんな経験が
彼の音楽に影響を及ぼしたと勘繰るのはいささか強引すぎるかもしれないけど、
それは機会があれば訊いてみたいと思う。いずれにせよ、彼は生き残り、
音楽を作る道を、アートに殉死する道を選んだということ。
ツアーの打ち上げでは、手品を披露してくれたトロイ。むしろラップよりも
手品のほうが上手いんじゃないかと思ったけど、もちろんそんなこと口には出せない(笑)
ちなみに、帰り際、リムジンバス乗り場で見送ったのだけど、
最後の台詞は「サワゲ!」だった(笑)
▲「Get amped, sin!」
さて、ツアー中、身内も含め、会う人会う人に心配され、
果てにはトロイとコリンにまで心配されるほど、ダメな男です(苦笑)
彼らには「スキニー」呼ばわりされ、「sinは食べるのが嫌いなんだね」と言われ、
何度も一緒に食事をしているのにも関わらず、「sinがものを食べてるところを
初めて見たよ」とからかわれる始末。・・・愛されていたということにしよう。
自分ではよく分からないものだけど、端から見ると相当やばかったんだろう。
いまはもう大丈夫です。多分。
今回の一番の教訓は、夏にツアーを2回も行うべきではないということ(笑)
後日談。
突然、会社に「Shin Ohsaki」宛で花束が届いた。こんな粋なことをするのは絶対に
タマちゃんだと誰もが思ったけど、実際はトロイからだった!
あの男、落ち着きがなくて、人騒がせな男だと思っていたけど、
意外とできた大人だったようだ(笑)ちょっと最近では味わったことのないサプライズ。
こんなに嬉しいことは人生のうちにそうはないだろう。
こんな感情を立て続けに味わってしまって、今後の僕の人生、大丈夫なのかな、
と思ってしまう(笑)
また、会いましょう。
▲sosoからの花束
▲うれしいメッセージ
This entry was posted on 2007年 9月 20日 at 12:47 and is filed under diary. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.