Best album of the year – Doveman 『The Conformist』
ひとの年間ベストなんておもしろいものでもないですが、風物詩として読み流していただければと思います。
いきなりぶっちゃけますと、今回選んだこの作品はliricoからライセンス・リリースするつもりのものでした。けど、アーティストがライセンスには全く興味がないということで、実はいまも返事を待っているんですが、2ヶ月も待ったからもういいだろう、と。諦める意味でもここに書こうと思ったわけです。
というわけでDovemanことThomas Bartlettの3rdアルバム『The Conformist』が私的ベスト・アルバム・オブ・ジ・イヤーでございます。弊ブログの熱心な読者(なんていないと思いますが)であれば、過去に書いたことがあるので、ピンと来る名前ではないでしょうか。なにせ名前がダサいので。ハト人間ですよ(つまり、いま話題の「鳥人(とりじん)」ですね)。
オルタナ・フォーク注目のシンガー・ソングライターSam Amidonや、4ADからリリースするThe Nationalのメンバーのうち、4/5がレギュラーで参加したり、シガー・ロスのヨンシー・ソロのプロデュースを手がけ、いまもっとも熱いプロデューサーであるNico Muhlyと親しかったり、本作には他にもNorah Jones、Martha Wainwright、Beth Orton、Glen Hansard (Swell Season)などかなりの大物たちがバックアップしていたりして、なにかと周りを固めるメンツがものすごいのです。プロデューサーもこれまでの作品同様、グラミー賞受賞経験のあるPatrick Dillettがてがけていて、とにかくハイ・クオリティー。
けど、やはり何よりすごいのはThomas Bartlettの個性です。専門的に学んだクラシック・ピアノは淡々としていながらエモーショナルで、およそ感情というものをすべて表現しているかのようであり、かなしみをたたえたウィスパー・ヴォイスはほんとうに静かでメランコリックですが、芯の強さを感じさせます。それはDakota SuiteのChris HoosonやScott Matthewが歌うサッドソングと同様の深みのある美しさを持っているように思います。
特にNIco Muhlyがセレステで参加し、鮮やかなストリングスの渦に巻き込まれるようにして彼が歌い上げる「Tigers」は個人的に今年もっとも心動かされた一曲です。
そして歌詞もほんとうにすばらしい。
そして、物事はおわる/そして、あなたは別れをつげる/ぼくは座って/このララバイを口ずさむ/あなたはぼくのほうを向き/なにを歌ってるのと尋ねる/けど、ぼくが答える前に/あなたはドアの向こう/ぼくは呼びかける/けど、あなたにぼくの声は届かない/ぼくはあなたの名前を叫ぶとき/ぼくが倒れるとき/天使が急いでやって来る
Tamas Wells、Scott Matthew、Chris Garneau。ぼくとしてはこの次にリリースされるべきなのはまさにこの人しかいないと思っていた。残念ながらそれはかないそうにないけど。たとえばNorah Jonesが参加している「Aftermath」なんて、彼女がリードヴォーカルじゃないだけで、曲としては彼女のアルバムに入っていてもおかしくないぐらいの曲だから・・・Dovemanはもっともっと注目されていいと思います。あと、今回はジャケットもまともですしね。
Doveman – Tigers
あと、裏ベストトラックはDovemanの「Almost Paradise」のカバーです。リリースは去年だけど、今年一番聴いたかも。
Tags: Doveman
This entry was posted on 2009年 12月 23日 at 00:17 and is filed under disc review. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.