Peter Broderick Japan Tour 2016 “Partners” 後記
昨年9月末、ピーター・ブロデリックが日本でおこなったいくつかのすばらしいライヴについて、彼と過ごした美しい日々について書き記すには少し遅すぎるかもしれませんが、あれから怒涛の日々をなんとか乗り越えてこうして振り返る余裕がでてきたのだと言い聞かせて、すこし筆をすすめてみます。
今回のツアーの計画を話し合いはじめたのはいまからもう1年も前のこと。元々は台湾のP Festivalへの出演依頼があって、そのついでに日本にも来てもらおうという流れになりました。そのときはすでにErased Tapesからピアノ・アルバム『Partners』のリリースが決まっており、「ピアノと歌」という今回のシンプルなセットはピーターたっての希望でした。
Photo by Takeshi Yoshimura
ピーターがサポート・アクトとして連れてきたアイルランドの女性シンガー・ソングライター、ブリジッド・メイ・パワー。大抵そうやって異性のアーティストを連れてくるときはつまりそういうことなのですが、彼らの場合、とても予想外だったのはふたりは実は夫婦だったということ。話を聞くとツアーの直前の夏に結婚したばかり。非公表なのかとおもいきや、京都公演のMCで言ってましたね。「今回のツアーは実はハネムーンみたいなものなんだ」と。
だから、たぶんこのツアーをいちばん楽しんでいたのはピーターとブリジッドだったのかもしれません。ツアーファイナルを除いて必ずアンコールの最初に演奏していたふたりのデュエットによる新曲の親密さと穏やかさを覚えていますか?とても美しいララバイはピーターの新境地です。
Photo by Takeshi Yoshimura
生粋のピアニストではないピーターがはじめてピアノときちんと向き合っておこなった特別なセット。一度きりかもしれない、たぶんいましかできないであろう演奏。そんなことをおもいながらぼくはそれぞれのライヴで、彼の表現するものすべて残さず記憶しようとなるべく努めました。ひとつとして同じライヴはなかったですし、実際どの公演のセットリストもちがうものでした。
Photo by Ryo Mitamura
2011年のニルス・フラームとの初来日のときにみせてくれたパフォーマンスははつらつとした印象でしたが、あれから5年ほどが経ち、美と静寂とエンターテインメント性を備えたパフォーマンスに彼の成長を感じることができたのがなによりグッときました。
アルバムごと、貪欲に己の興味に従い、みずからの表現を追求しつづけてきたピーター。ひとによってはすごくとっつきにくいアーティストなのかもしれません。でも「ピーター・ブロデリックは音楽に愛されている」。それを確信できたことで、ぼくはずっと彼のすることをすべて受け止めていくのだというそんな決意を感じたのは、ルーテル市ヶ谷教会で歌ったアイルランド民謡「As I Roved Out」の圧倒的なパフォーマンスを聴いたときでした。
芯の通ったピアノの表現力以上に、シンガーとしてのすばらしさがより印象に残った方も少なくはないとおもいますが、クラシカルな感性とポートランド印の歌心の二大武器を手に、これからますます「とっつきにくい”最高の”アーティスト」になっていってくれるでしょう。
(次作はポートランドのアーティスト、デヴィッド・オールレッドと作ったヴァイオリン、コントラバス、声のみの実験的チェンバーフォーク作品です。4月発売)
最後になりましたが、改めて感謝とお礼を。Republik河崎さん、papparayray山西さん、night cruising島田さん、Club Solanin井上さん、猫町さん、moderado music岡本さん、蔭凉寺の住職さん、Fly sound福岡さん、Flussの黒川さんと小松さん、sonihouse鶴林さん、三田村さん、吉村さん、その他関係者のみなさん、そしてすべてのお客様に厚くお礼申し上げます。
台湾から東京に戻ってきた最後の夜、彼の大好物のお好み焼きを食べてから、いっしょに近所の銭湯にいったことをたまにおもいだします。もう2度とやりたくないし2度とやらないと何度でも言うけど、すばらしい音楽としあわせな記憶に日々支えられてなんとか進んでいます。またどこかで会えるといいね。
ありがとうございました。
Peter Broderick Japan Tour 2016 “Partners” setlist
9/23 福岡 papparayray
1. I Am Piano
2. Diverge
3. Below It
4. In A Landscape (John Cage)
5. I Threw It All Away (Bob Dylan)
6. Another Glacier
7. As I Roved Out (Irish traditional)
8. On Time
9. Conspiring
10. Bernard & Elba’s Waltz
11. Dreamer (Tiny Vipers)
encore
1. New song
2. Colours of The Night
9/24 京都 元立誠小学校講堂
1. A Snowflake
2. Diverge
3. If I Sinned
4. On Time
5. Carried
6. Float medley
7. Laden
8. Sideline
9. Human Eyeballs on Toast
10. Bernard & Elba’s Waltz
11. Games Again
encore
1. New song
9/25 名古屋 valentinedrive
1. Begin
2. Diverge
3. On Time
4. Conspiring
5. Laden
6. Up Niek Mountain
7. Another Glacier
8. As I Roved Out (Irish traditional)
9. I Threw It All Away (Bob Dylan)
10. If I Sinned
11. Bernard & Elba’s Waltz
encore
1. New song
2. A Snowflake
3. Hello to Nils
9/26 岡山 蔭凉寺
1. Begin
2. Moment
3. Null
4. Diverge
5. Red Earth
6. I Threw It All Away (Bob Dylan)
7. In A Landscape (John Cage)
8. Carried
9. Sideline
10. Human Eyeballs On Toast
11. Bernard & Elba’s Waltz
encore
1. New song
2. Below It
9/28 東京 ルーテル市ヶ谷ホール
1. Begin
2. I Am Piano
3. Dreamer (Tiny Vipers)
4. On Time
5. Up Niek Mountain
6. Another Glacier
7. As I Roved Out
8. If I sinned
9. Ceasefire
10. Laden
11. Bernard & Elba’s Waltz
encore
1. New song
2. Colors Of The Night
3. Hell to Nils
9/29 東京 Fluss
1. Sideline
2. Human Eyeballs On Toast
3. Diverge
4. Carried
5. In A Landscape (John Cage)
6. I Threw It All Away (Bob Dylan)
7. Red Earth
8. Conspiring
9. Below It
10. Eyes Closed And Traveling
encore
1. With the Notes in My Ears
2. Hello to Nils
3. Float medley
Tags: Peter Broderick
This entry was posted on 2017年 2月 7日 at 18:21 and is filed under diary, Peter Broderick. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.