「107年前のピアノと声のみで作られた亡霊たちの記録」
LOW HIGH WHO?主宰者Paranelによるはじめてのアコースティックソング・アルバム

不可思議/wonderboy、DAOKO、Jinmenusagi、GOMESSなどを輩出し、ことし10周年を迎えたLOW HIGH WHO? PRODUCTION(LHW?)の主宰者にしてプロデューサー。そして芸術家であり音楽家でもあるParanelが4年間を費やしてついに完成させたニュー・アルバム。世界中のサッドソングを紹介しつづける唯一無二のレーベルLiricoにとって、日本人アーティストのリリースはこれがはじめてのこと。2014年の『タイムリミットパレード』に続く、フル・アルバムとしては2ndとなる本作は、ヒップホップとポエトリー・リーディングを軸にした作品を数多く届けてきたParanelにとって、「歌」を中心に据えたはじめての作品です。
 
2012年の秋、神戸市塩屋の旧グッゲンハイム邸にて録音された、LHW?のピアニストMonk is my absoluteによる107年前の古いピアノの即興演奏。海を臨む古い洋館はあらゆる音に震え、ピアノが演奏されるとまるで亡きひとたちが集まってくるかのような不思議な夜でした。時間に束縛されない特別なピアノ音源と長いあいだ向き合い、命を削りながら言葉を吹き込んで生まれた新たな名作。元々、『タイムリミットパレード』制作と同時期に構想を開始。たくさんの人々、さまざまな物語との共生を、自らの死までの時間制限のあるパレードになぞらえたその作品と関連するように作りはじめられた『オールドテープ』。「人の最期に再生される思い出と過去が詰まったテープ」というコンセプトを、ビートやリズムを排除し、ピアノと声のみで作り上げました。
 
本作のなかで最初に作られたあたたかい名曲「温度」、エリック・サティの「ジムノペディ」を引用した「アパートメント」、LHW?の看板猫トゥーのことを歌ったラヴ・ソング「TWO」、消えいくような儚さに包まれるエンディング「川辺」と、曲によって表情を変えるParanelの歌は、ビートに頼ることなくはじめてヴォーカリストとしての表現を突き詰めています。さらにParanelの創造性あふれる詞の世界はピアノのみのシンプルな編成ゆえ、より深い情趣を獲得しました。本作制作のあいまに作り発表した2015年のミニ・アルバム『球体』において、ceroやFishmans佐藤伸治に通じる歌に寄ることで新境地のシティ・ポップに仕立てあげて支持を広げましたが、孤独とかなしみにまみれ、弱さと繊細さに満ちながらも強く美しい『オールドテープ』はより大きな驚きをもって受け止められることでしょう。
 
かなしみを決して失いたくない人たちに永遠に愛される歌。Paranelにとって、これが自分自身のことを歌う最後の作品となります。

 

 

Track listing:
1. 温度
2. 嫌になる
3. 潜水艦
4. 映写機
5. 独房
6. 青い人
7. アパートメント
8. 四季
9. おばけの時間
10. パーティドレス
11. TWO
12. バイバイ
13. 川辺