ダブル・ベース奏者/作編曲家として知られるベテラン、ホジェリオ・ボッテール・マイオの9年振り通算6枚目のフル・アルバムは相変わらずのクオリティー。これまでのアルバムで見せてきたコンテンポラリーなMPBとブラジリアン・ジャズ、そして室内楽の良質さを凝縮した音楽性はさすがの完成度で、名盤と呼ぶに相応しい一枚です。
オーストリアのグラーツ国立音楽大学や米国のバークリー音楽院などでジャズとクラシックを学び、その後はダブル・ベース奏者として名だたるブラジリアン・ジャズ〜MPBの巨匠たちのバンドで演奏するなど、ミュージシャンとして輝かしいキャリアを持ち、その端正なルックスからコッポラの「ゴッドファーザー パート3」出演という逸話もあるホジェリオ・ボッテール・マイオ。
96年以降、これまでに発表した5枚のソロ・アルバムはどれも素晴らしく、特にアンドレ・メマーリにも通じるブラジリアン・インストゥルメンタルの名作と誉れ高い『PRAZER DA ESPERA』(2006)、ドン・サルヴァドールやホベルト・メネスカル、そしてカルロス・アギーレが参加し汎南米的音楽世界を描いた傑作『SOBRE O SILENCIO』(2012)では、作編曲家としても非常に高い評価を得た。
9年振りとなるオリジナル・アルバム『POR UM TRIZ』は、インスト中心だった過去作から一転、全ての曲で、日本でもよく知られる実力派ヴォーカリスト達をフィーチャリングしている。ヘナート・ブラス、ファチマ・ゲヂス、ジャニ・ドゥボッキ、セルジオ・サントス、アナ・パウラ・ダ・シウヴァからヴァネッサ・モレーノまで、錚々たるヴォーカリストの魅力を引き出す洗練されたコンポジションとアレンジは、過去のインスト名作群と比べても遜色のない良質な魅力に溢れています。コンテンポラリーなMPB、ブラジリアン・ジャズ、そして室内楽の要素を巧みに融合するセンスはもはや円熟の域と言えるでしょう。
<収録曲>
01. Vem Dançar – feat. Renato Braz (4:28)
02. Hora de Sonhar (4:44)
03. Gangorra – feat. Jane Duboc / Cristóvão Bastos (4:00)
04. Maturidade – feat. Ana Paula da Silva (4:53)
05. Luzes – feat. Vanessa Moreno / Hector Costita (3:41)
06. Muro Ou Ouro – feat. Sérgio Santos (4:50)
07. Por um Triz – feat. Vanessa Moreno (4:26)
08. Tranchan – feat. Fátima Guedes (4:36)
09. Tudo por um Ocaso – feat. Vanessa Moreno (4:50)
10. O Outro Eu – feat. Jazzafari (7:20)