hue and cry

The Leisure Society インタヴュー on THE LINE OF BEST FIT(日本語訳)

UKの有力なウェブジンThe Line of Best Fitにザ・レジャー・ソサエティのインタヴューが掲載されたので、日本語に訳してみました。ものすごく長いインタヴューで大変でしたが、ブライアン・イーノとの交流や、彼らが注目されるきっかけとなった代表曲「The Last of the Melting Snow」をもともとニール・ハノンにヴォーカルを頼んだネタとか、スフィアン・スティーヴンスへの言及とかいろいろと興味深い内容でした。、答えているのは例によってフロントマンのふたり。ていうか、クリスティアンがよくしゃべる・・・。某誌的な2万字インタヴューじゃないけど(実際は12000字!)、長くて読むの大変ですがぜひチェックを!


- グループ全体がみんなマルチ・インストゥルメンタリストだと思うのですが・・・

クリスティアン: ぼくとニックはふたりともすごくたくさんの楽器を演奏できるよ。新しいレコードではヴァイオリン奏者はギターも弾き、フルート奏者はキーボードも弾いてて、ぼくらはほんとうにごちゃ混ぜなんだ。彼女は100バンドくらいに所属してるよ・・・

- あなたたちふたりは3つか4つのバンドをかけもちでやってるんですよね?

クリスティアン: だんだん少なくなってるね。このバンドでいまは忙しいから。

ニック: 何年か前ぼくは6バンドくらいにいたんだけど、あのときはほんと責任感がなかったんだ。サンズ・オブ・ノエル・アンド・エイドリアンでプレイしていたけど、時間がなくなっちゃったんだ。とても忙しくなっちゃったからね。

- ニック、何年か前にブライトンのウィルコメン・コレクティヴのために音楽をやらないかもしれないって言ってましたよね。なぜですか?

ニック: ウィルコメン・コレクティヴを始めたトム・コーワンに参加したんだ。彼はぼくとおなじバートン・オン・トレントの出身だから。ぼくは「暗黒時代」を進んでいて、ほとんど音楽を諦めかけていたんだけど、彼のバンドShorelineのアルバムでプレイしたんだ。ウィルコメンはぼくらの1stアルバムもリリースしてくれたし、とても助けになったよ。

- それからフル・タイム・ホビーが現れて、デビュー作『The Sleeper』を再リリースしました。これはどのようにして起きたのでしょう?

ニック: 完全にベッドルーム産業だったね。だれも彼らがやっていることはわからなかったし、いっしょにやっていくうちにぼくらも学んでいった。レコードのディールに契約するのは気乗りしなかったんだ。とくにぼくがね。だって、音楽業界に入ろうとしては失敗する年月を過ごして、とてもねじまがって苦々しい気持ちだったからね!

クリスティアン: ウィルコメン・コレクティヴのトムとマーカス・ハンブレットを連れてブライトン・ビーチに行ったことを覚えてるよ。ビーチに座って彼らに言ったんだ。「見てよ、これがレコード・ディールだよ」って。いくつかおもしろいパーティーがあって、ぼくらはサインするべきかどうか議論して、それで彼らは言ったんだ。「行けよ、ぼくらとやるよりもずっといいことがたくさんあるさ」って。だからぼくらは結局サインした。

ニック: あとぼくは(フル・タイム・ホビーのボスの)ナイジェル・アダムスのことを知ってたんだ。彼らのバンドのひとつでギターを弾いたことがあって、彼はほんといいひとだったね。

- ふたりともずっと一緒にいるんですよね?ふたりとも雇われのセッション・プレイヤーだったんですか?クリスティアン、たぶん夢かもしれないですが、私は2007年にあなたがブッシュ・ホールでアマンダ・パーマーのサポートをしてたのを観たと思います。・・・クリスティアン・シルヴァって名前で。

ニック: うん、そうだね。いくつか小さい仕事をやってたけど、正直、どれもとくにうまくはいかなかったよ。

クリスティアン: アマンダのツアーで歌ったね。あの夜はほんとうによかった。ニックはそのときいっしょに演奏したんだ。そのとき、ぼくらはザ・レジャー・ソサエティを結成したんだ。1年半くらいそれをやって、マップス・アンド・ホワイト・ラビッツやピーター、ビョーン・アンド・ジョンやアマンダ・パーマーとツアーをしたよ。

クリスティアン・シルヴァのアルバムはとても折衷的なレコードだった。じぶんの創造性を目的はないけど情熱的なやりかたでただ吐き出したんだ。いまじゃもっと集中できるだろうね。ぼくらはふたりともいろいろやってきたけど、心はこのプロジェクトにあるよ。

- 『Into the Murky Water』は音楽的に大きく変化したと感じていますか?私にはかなり違うように思えました。よりカントリーで、よりポール・サイモンのようで・・・

ニック: 明らかな前進だよ。いつもステップアップしたかったからね。

クリスティアン: 最初のレコードにはいくつもの妥協があったんだ。ニックはバイトがあったし、機材もすくなかったし、知り合いのミュージシャンも少なかった。それにスタジオでの経験も少なかったからね。横柄にじぶんたちでプロデュースすることに決めたにもかかわらず、どうすればいいのか実は知らなかったんだ。

- おそらくエンジニアがいたんですよね?

クリスティアン: いや、全部じぶんたちでやったんだ!

- それはなかなかのうぬぼれですね・・・

クリスティアン: うん、ぼくらは2回もアイヴァー・ノヴェロ・アウォードにノミネートされたからね(笑)

ニック: ほんとうはそんなつもりじゃなかったよ・・・ただじぶんたちでレコーディングしたってだけ。だからただ少しずつ学んでいったんだよ。

クリスティアン: おまえはね。ぼくはそれはリリースされるっていつも思ってた。2ndアルバムでは、ぼくらはバンドとしてもっと集中して、厳格なミュージシャンたちがいてよりよいマイクもあって、バイトもなかったから。使えるお金も少しあったから、ケントに大きなアパートを借りて、数週間そこで曲を探求するスペースがたくさんあった。ずっとタイトな曲になったと思うよ。

- デビュー作ではあなたの人生すべてを使って作り上げたましたが、2ndアルバムをとてもはやく書かないといけないというクラシックの落とし穴には遭いましたか?

ニック: それほどでもないね。ときどきはすこし怖くなったけど、前のアルバムを作りおえる前でさえ、すでにこまごまと書きはじめてたからね。タイトル・トラックは3年前に書きはじめたんだけど、リリックができるまで3年もかかっちゃった。それがひとつかな。ぼくはいつもそれがすごい曲になると思ってたけど、ただ正しい感触がほしかったんだ。

- リリックは書くのが大変だってわかった?

ニック: ほんとうに速く思いつくこともあるんだけど、なんどもやり直すこともあるね。この曲は特にそうだった。アルベール・カミュの『転落』という本にインスパイアされてるんだ。そういうふうにリリックを書いたのははじめてだね。なんどかその本を読んで、意味を理解して、それでそういう物事の側面に関するなにかを書こうとしたんだ。

- リリックはザ・レジャー・ソサエティの重要な部分のように思えます。ただの思いつきではなく、とてもよく考え抜かれていて、たまにおもしろいです・・・

ニック: ぼくは完全にマイノリティーだけど、リリックは音楽と同じくらい重要だと思うよ!

- クリスティアン、ニックがなにを歌ってるか知ってますか?レコーディングのとき、リリックのほうも聞いてます?

クリスティアン: もちろん。ニックは3、4度ぼくに演奏して聞かせてくれるし、泣いちゃったときもある。「Last of the Melting Snow」とかこのアルバムの「The Hungry Years」なんかはじぶんの感情を抑えることができなかったよ。バンドのみんながニックをソングライターとして最高に尊敬してる。ひょっこりとやってきてけなしたりはしない。ぼくらは彼の気持ちに反応してるんだ。おおげさに聞こえるかもしれないけど、それがバンドがやらないといけないことだよ。

- アイヴァー・ノヴェロの2度のノミネーションはどれだけの驚きでしたか?

ニック: ものすごい驚きだったよ。信じられなかったと思う。

- そのニュースはどのように届きましたか?

ニック: 手紙がドアを通り抜けて届いたんだ。2度目はeメールだったけど最初のは手紙だったね・・・

クリスティアン: しかも封蝋のね!

ニック: ただじっくり見てた・・・仕事に行く途中で遅刻してて急いでたから、信じられなかったんだ。ママに行ったら、アイヴァーズに電話して訊いたんだ。「これはほんとうですか?ほんとうに私の息子がノミネートされたんですか?」って。彼女は悪ふざけかなにかだと思ったみたい。

- 最初のノミネートの日を覚えていますか?

ニック: クレイジーだったね。そのときぼくはまだ倉庫で働いてたから、それが大きなニュースになってた。テレビ・カメラを持ったひとたちが通りからやってきて、ほんとうに奇妙だったよ。国会議事堂まで運ばれてインタビューをしたんだ。いまだったらなんでも準備はできてるよ!

- アイヴァー・ノヴェロはバンドにとっては受賞を熱望するようなものではないから私はひかれません。音楽業界を越えたようなものなので・・・

ニック: ばかげてるかもしれないけど、ぼくはいつも意識していたよ。昔レコードショップで働いてて、ミュージックウィークがいつもアイヴァーズの記事を書いてたからね。

クリスティアン: ブリット・アウォードやNMEアウォードよりもずっと意味のあるものさ。侮辱するつもりじゃないよ。ブリットやNMEはそんなに意味のあることじゃない。マーキュリー・アウォードはまだ意味があるね。アイヴァーズはすごく意味のあることだと思うよ。

- あなたたちはことしのマーキュリー・アウォードのノミーネトの自信があるんでしょうね。

クリスティアン: うーん...1stのときにそれを穫るだろうと言われてて、ダメだったからね!だから、ぼくらの自信は・・・なくなっちゃったよ。

ニック: 実際だれかがアルバムのタイトルを「Into the Mercury Water」ってアナウンスしてたね。だからそれはいい予兆だと思ったよ!

クリスティアン: かんたんなヘッドラインだな。

- ステージで9人のひとを観ましたが、たくさんのバンド・メンバーとツアーするのは大変なことですか?

クリスティアン: いまツアーは7人で行ってる。財政的にもよりチャレンジングだけど、もういちど言うけどぼくらは音楽をとてもシリアスに考えてて、ぼくらが成功しようとがんばってることをうまくやるためにはたくさんのミュージシャンが必要なんだ。バンドにはそんなにエゴはないんだ。きみはバンドの最大のエゴと話してる。ぼくはかなりいいやつだし、だからだいじょうぶ!(笑)自意識がだいじなんだ・・・。

ニック: 9人乗りのバスがあって、このツアーでははじめてサウンドマンにも付いてきてもらったんだ。だから全座席がうまっちゃう。かなり和気あいあいとしてるだろうけど、いいかんじだろうね。財政的にはそれでほんとうに難しくなる・・・できるときは床でも寝るし、実際、家族や親戚の家にも泊めてもらうんだ。

クリスティアン: 主要な大学のある街ごとにひとりバンドメンバーを見つけようとしたから、いつも泊まる場所はあるのさ!

- このアルバムはどこで書かれたのでしょう? 1stのときは公共の交通機関でけっこう考えられたというのは知ってますけど。

ニック: 多くのリリックは車のなかで書かれてる。なんどか沿岸の街を旅したんだけど、ラフ・デモを録って、カーステレオで聴きながら、ただ歌いながら旅をしたよ。高速道路を運転しながらね・・・ぼくはもうほんとは家を空ける必要はないんだけど、このプロモーション活動はこの2年ではじめて家から出たときなんだ!

- 6ヶ月もの長いツアーに出ます?それとも短いのを一気にやるほうがすきですか?

クリスティアン: 短いほうが絶対いいね。ガイ・ガーヴェイ(エルボー)が2009年のマンチェスターのライヴに来てくれて、できるだけたくさんツアーをしろってアドバイスしてくれたんだけど、ぼくらはただお互いに見合ったんだよね。ガイのことはすごく尊敬してるんだけど、ぼくらは彼の言うようにはできないだろうな。

スフィアン・スティーヴンスはぼくらのアイドルのひとりで、彼は厳選したライヴをやるひとなんだけど、彼がライヴするときは意味があるんだ。たくさんツアーをするバンドは損失があるってわけじゃないけど、ただぼくらがやろうとしてることじゃないと思う。

ニック: もしこのアルバムはほんとうにすごく売れたら、ツアーはプレッシャーになるだろうね。ぼくらは実際、できるだけたくさんのひとにこのレコードを聴いてもらいたいとも思ってる。バランスをとらないと。

- 鞭をならしてツアーすべきだって言うマネージメントはいないのですか?

クリスティアン: ぼくらはじぶんたちでやってるんだ。だからぼくが鞭をならすし、ニックも鞭をならす。で、ぼくらはお互いに無視するっていうね!

- ふたりはいつもうまくやってきたのですか?

クリスティアン: うん、お互いにだいすきだと思うよ。緊張感は増していってるけど、ほんと健康的な緊張さ。ふたりとも音楽に対してベストを尽くしたいんだ。(ニックに向かって)ってことでいいよね?

ニック: 約2年いっしょに住んで、6ヶ月間ベッドルームをシェアして、そして、ベッドを・・・

クリスティアン: ちいさなシングルベッド。バンドの基本だよ。ハーモニーには練習が必要なんだ!

- ロンドン・アクアリウムでアルバムの発売日にライヴを行うことにしたのはなぜですか?

クリスティアン: アルバムのタイトルが「Into the Murky Water」だからね(笑)あと、レーベルが頼んだから。

ニック: ぼくらもすごく興味があったんだ。イメージすべてに関心があったし、ジャック・クストー・・・ぼくらはウェス・アンダーソンの映画『ライフ・アクアティック』がだいすきだったから。ぼくはこどものころ、いつも海洋生物学者になりたかったから、かわいいショップにいるこどものような気分だよ。そこに降りていったとき、ただ見渡したんだ。「水族館でライヴを企画するなんて、世界で最高の仕事だ」ってね。

- ニック、あなたはかつてザ・テレスコープスにいたんですよね?「This Phantom Life」のB面で「Flying」をカバーしてますが、これは遅ればせながら延滞した出版印税を取り戻そうとした試みでしょうか?

ニック: ハハ、違うよ。この曲はぼくが参加する前の曲だもの。ぼくがザ・テレスコープスに加入したのは彼らがクリエーションから離れたときで、だから長くはつづかなかった。彼らの曲はいつもすきだったよ。実際には公開されるクリエーション・レコーズの映画とつながったコンピレーションのために頼まれたんだ。カバーするのはただほんとうに楽しかったよ。

スティーヴ・ローリーはすばらしいソングライターで、この曲はとても美しいと思う。曲のよさを十分に表現できたと思う。別のやり方だけどね。原曲よりもいい部分もあるね。原曲はいまでは時代遅れにも聞こえるから。あれは90年代的だよ。

クリスティアン: ぼくはほんとうに誇りに思ってるよ。実際、アルバムに収録しようとしてたけど、アルバムのなかに並べるのは難しくて、できなかったんだ。

- 曲順とかを決めるのに悩みましたか?

ニック: とくにクリスティアンがね。

クリスティアン: そうだね。曲順は重要だし、作品を説得力のあるものにしたいし、すごく思い悩んだよ。しっくりくるまで無数のプレイリストを作ってね。

- ・・・誰かが「シャッフル」ボタンを押すまで。そんなことしたら終わりですね!

クリスティアン: うん。でもアルバムが聴きたいひとのためにアルバムを作ってるから。マイノリティかもしれないけど、ぼくらはまだそれを信じてるよ。

ニック: ぼくらはひとつのアートであるかのようにアプローチしたんだ。パッケージも含めたひとつのものとしてね。ほんとうに美しいものになってるよ。それは1stの再リリースのときと似てるけど、切り抜きのスリーヴで一層前へ進めたね。とてもすばらしい出来だよ。

- デザインのプロセスにも深く関わったのですか?

クリスティアン: その通りだよ。ぼくらの友人がすべてのデザインを手がけたんだ。彼の隣に座って、いっしょにアルバムを聴いたり、アルバムについて話したよ。たぶん必要以上に深く関わってたと思うけど、フル・タイム・ホビーはほんとうに寛大だったね。ナイジェルは暴利を貪るようなひとではないから、ある程度は好意でやってくれたよ。ほとんどのレーベルがこのレコードにかかった単価だったら払わないだろうね。商売上の自殺行為かもしれないけど、美しいパッケージなんだよ。

- スタイリッシュなパッケージの、完璧に並べられたレコード(ただ音楽をレコーディングするじゃなくて)に対する芸術鑑定家の態度は、ただmp3にしか興味のないひとたちを無視していると思いますか?

クリスティアン: このレコードがそうだとは思わない。すべての曲がそれ自体で説得力があるから。

ニック: ぼくらがそのことに対してスノッブだとは思わないし、たくさんのひとたちが気にしないってわかってるけど、ぼくらにとってはほんとうに重要なことなんだ。

- そもそも商売魂を感じていますか?「これは売れる!」「これはラジオでかかる」って考えながら?

ニック: ソングライティングやレコーディングじゃなくて、ぼくらは当然アルバムが成功すればいいと思ってる。こんなに大所帯のバンドだからぼくらみんなのために十分なお金を得るのは難しいことだよね。

でも、実際曲を書いてレコーディングするとき、商売のことを考えはじめちゃうとすぐにそれはおわりのはじまりになるんだ。

クリスティアン: いつも言ってるよね?

- ブライアン・イーノとはなにがありましたか?

クリスティアン: ブライアンはラフ・トレード・イーストに来たんだ。もう2年も前のことだけど、ナイジェルが彼の大ファンで、1stアルバムのことを話したら、彼はちょっと素っ気なかったみたい。レコードをみにいったから、ナイジェルが「Last of the Melting Snow」をお店のステレオでかけたんだ。そしたらブライアン・イーノがまっすぐやってきて、これはなんだって尋ねた。ナイジェルは「あなたが素っ気なかったバンドですよ」って言ったんだ。

彼はそのときアルバムを買ってくれて、ナイジェルから聞いた話ではそのあと、10枚買っていったって。この話を聞いて、それからインタビューで彼が2009年のお気に入りのレコードだって言ってるのをみたんだ。だから、ぼくらのレーベルが彼とのみテーィングをセッティングしてくれて、ニックとぼくが彼のフラットに行ったんだ・・・

ニック: それでチーズとビスケットを食べたね!

クリスティアン: チーズとビールを食べて、あと、少しの笑いをね。結局、ぼくらはちいさなパーティーに定期的に参加してたね。最終的に、作り終える前に新しいレコードを彼に送ったんだ。彼の考えを聞くためにね。彼の唯一のコメントは1曲が長過ぎるってことで、それがカバー曲を取りのぞいた理由なんだ。

ぼくらが尊敬する多くのひとたちのように、彼はほんとうにぼくらを支えてくれた。期待したことのないようなやりかたでね。それになんの利益にもならないのにメディアでぼくらのことを話してくれたり、アドバイスをしてくれたり。ぼくらはとてもラッキーだよ。彼はとても楽しい男だね。

ニック: 彼のクリスマス・パーティーにも行ったよ。ちょっと奇妙な経験だったね。それにほんとうに、ほんとうに泥酔しちゃったんだ。タバコを吸いに外にでたとき、間違えてほかのだれかのジャケットを着てたんだ。ぼくはじぶんのものだと思ってて、ヘレン(・ウィテカー、フルート)に「あなたレディースのジャケット着てるわよ」って言われたんだよね。「これほんとタイトだね・・・」ってかんじだった。

- で、イーノと直接仕事をする計画はしなかったんですか?

クリスティアン: 口にしたくない問題だね・・・彼はすぐに対応してくれたよ。はじめて彼のもとに行ったとき、彼は言ったんだ。「いいか、私はきみたちといっしょに仕事をするべきじゃないと思う。なぜなら私はきみたちの音楽がほんとうにすきだし、私は私の助けが必要だと思うひとたちと仕事をするつもりだからね。私はきみたちのしてることがすきなんだ」ってね。彼はただそこから離れてたんだと思うけど、ぼくらとしては彼に頼むつもりはまったくなかったんだ。正直に言うとね。彼と同じように才能があると思ってるし、ぼくらは自立していたいんだ。

ニック: それが早い段階で彼と話したことだよ。たくさんのバンドがじぶんたちで作ったレコードをリリースして、それからビッグなプロデューサーの力を得て、別のアルバムを作ったらまったく別のサウンドで最初のアルバムのマジックをぜんぶ失ってる。だからぼくらは2ndもじぶんたちで作りたかったんだ。

- あなたは支配欲の強いひとですか?結局、こういうことですよね?

クリスティアン: その通り!まったくだよ。それだけじゃないね。スタジオの環境はぼくらにはすばらしい場所じゃなかった。赤信号、高いスタジオの風通しの悪い真空、お金がかかる時間、すべてのものがね。ニックよりもいいアイデアを持ってるひともいるかもしれないけど、ぼくらには意味がないんだ。

- 多くのバンドがもうひとりのバンド・メンバーのようにプロデューサーを扱っているますが・・・

クリスティアン: そうだね、もし誰かが現れて、9人目のバンド・メンバーなったら、びっくりするだろうね。たぶんぼくらはオープンなんだけど、ぼくは驚く。

ニック: コントロールするために他の誰かをクビにしたりそのままにしたりするのはとても難しいことなんだってわかったよ。想像できないよ。多くのバンドがそうやってるって聞いてるけど。彼らはただレコーディングして、他の誰かが現れて、プロデュースしてミックスして・・・ぼくはそんなの考えられないね。

たぶん、じぶんたちで十分にやりきって、完全に消耗してしまったところまでいけば、他の誰かに頼みたくなるんだろうね。

クリスティアン: ぼくらは「Mali Music」のアルバムを作ったある男に会ったんだ。彼はキューバのミュージシャンたちといっしょにいろいろやってた・・・彼の名前なんだっけ?ジェイミー。デーモン・アルバーンといっしょに仕事をした。ぼくがいままで会ったなかでぼくらにフィットしそうなのは彼だけだね。

- スタジオでは終わりのないレコーディングでうんざりしませんでしたか?

クリスティアン: ぼくらはほんとものすごくレコーディング作業がすきなんだ。取りつかれてるね。ぼくらはすごいオタクで退屈な男たちだよ。

- ライヴのとき、スタジオで作ったノイズをどうにか再現するのは大変なことでしょうね。

クリスティアン: ほんとうのチャレンジだよな?

ニック: ちょうどいまそのための作業中なんだ。ここ数週間リハーサルを行ってきたんだよ。

クリスティアン: 先月はハックニー・スタジオで寝泊まりしてたからね。

ニック: 最初の数回のリハーサルはほんとうにゾッとしたよ。「これをライヴでやれないんじゃないか」って。それからすべてがぴったり収まりだしたんだ。

クリスティアン: お前はある部分の本質をつかんだんだよね。模倣しようとはできなかったけど、「本質はなんなんだろう?だれができるんだろうか?」って。いまじゃもうものにできたと思うよ。2時間分くらいのマテリアルがあるね。スタジアム・バンドみたいなね。ぼくはほんとこのサウンドに誇りをもってるよ。

- あなたがたは伝統的な意味で野心を持っていますか?ウェンブリー・スタジアムでライヴをするようなロックンロールのスーパースターになりたいでしょうか?

クリスティアン: ロウランド・リヴロンのテレビ・キャリアを真似したいね。徐々に大衆の認知を得て上昇していって、それでそれに溺れるっていうね。ぼくはニックのことをかばいたくないけど、もしあなたたちがオーディエンスを集めてくれて、それでオーディンスが増えていけば・・・最近までのいい例がザ・フレーミング・リップスで、彼らのオーディエンスはバンドともに進んできた。あるいはスーパー・ファーリー・アニマルズ。オーディエンスを増やしつづけるつねにいいバンドだね。日に当たっているときも、日に当たっていないときもね。けど、一貫性と一連の作品。それがヒットなんかよりも重要なんだよ。

[注:ロウランド・リヴロンじゃまだ生きてます!]

- 2ndアルバムに取りかかりはじめる前に1stアルバムを聴きましたか?「うん、ここがぼくらのいた場所だ、ぼくらが目指す場所までやり遂げよう」って。

クリスティアン: そうだね。でも、ニックが知ってるやりかたとは違うけどね。

ニック: ぼくらはまったく違うやりかたでアプローチしたと言えるね。そのときまでなんども生演奏したんだ。前作のときは生演奏はあまりしなかった。だからソングライティングのやりかたが違うんだ。そういう理由でよりビッグでより・・・適切でよりエレキギターやドラムが入ったものになったよ。

- アレンジメント面では、あなたたちが言うようにより勇ましいですね。

ニック: うん、それはトリニティ・ミュージック・カレッジに通うヘレンのおかげだと言えるね。そのおかげで何人ものミュージシャンに近づくことができたから。「ここにはサックスが欲しいなぁ」みたいなかんじでね。別のサウンドを試すこと、それはいつも目的だったよ。違った楽器のサウンドがただ大好きなんだ。

サックス奏者は「This Phantom Life」のヴィデオを観たときとても喜んでくれたよ。マーク・ヒープが出演してくれたから、彼らは「わぁ、彼だ!」ってかんじで。この曲のバックグラウンドで彼らの演奏したサクソフォンが鳴ってるからね。

- ただランダムにマーク・ヒープがいいと起用されたんですか?

ニック: Peep Showのオリヴィア・コールマンがバンドの大ファンで、だから彼女にメールしたんだ。実際クリスティアンがそう促してくれたんだ。ぼくは彼女に頼みたくなかったからね。いつもおじけづいちゃうから。それで彼女は言ったんだ。「手配させて」って。1時間後、彼女のアドレス帳のものすごいリストが送られてきて、その全員に頼んだんだ。彼はあの役に完璧な男だったね。すごくいいひとだったからすごいよかったよ。

- 支配欲が強いひとたちとしては、ヴィデオの監督とかも行ったにちがいないですよね・・・

クリスティアン: (笑)支配するのはあきらめたよ。ひとの才能の限界を知る必要があるね!映像のことはなにもわからないよ。ぼくは撮影の前にただみんなをちょっと激励しただけさ。「お前ら、吹き出さないようにしろよ、笑うのはやめろ・・・」ってね。ヴィデオを観てくれれば、笑いをこらえきれてないシーンなんてないってわかるよ。ムリだよ。彼はおかしすぎるもん。まさに彼はおかしすぎるよ。だから撮影には笑いが溢れてたね。

ヴィデオを作るとき、セットに役者がいたのはよかったね。プレッシャーを取り除くから。彼が注目の中心だから、ぼくらはちょっとはリラックスできたよ。前の夜は実際ちょっと怖かったんだ。でも撮影場所に着いた途端、いままでで最高の気分だったと思うよ。

- 同時代のひととして、誰に共感しますか?

ニック: 正直、だれもいないかな。

クリスティアン: もしひとがぼくらと比べるなら、そうだな、デパートメント・オブ・イーグルスはすばらしいね。あのアルバムはぼくがいままで聴いたなかでもっとも偉大な作品のひとつだよ。彼らの音楽をすこし参考にはしてきたけど、ニュー・アルバム・・・「Into the Murky Water」のような曲は、他のどんなバンドにも書けないものだと思う。他のものよりいいとか悪いとか言うつもりはないけど、それが本質的にぼくらなんだと思うし、いまぼくらがいる場所なんだ。フォークやロック、インディーやポップにフィットしてるかはわからないけどね。わからないし、そんなに気にしてないよ。

- ツアーでは、音楽的に互いを補うためにひとを選びますか?それとももっとビジネス的ですか?

ニック: ふつうはレーベルが提案してくれるよね。ぼくらはただ「いいね・・・」って言うだけ。

クリスティアン: いっしょにツアーするサラベス・トゥチェクは、リストのなかで彼女の音楽がすてきだったから選ばれた。それは彼女だったからで、別のひとはもっとロジステックだね。そのほうがラクだから。

- ニール・ハノン(ザ・ディヴァイン・コメディ)とツアーしてましたっけ?それとも1公演だけ?

ニック: 1公演だけだね。

クリスティアン: ニールには二度のアイヴァーズで会ったんだ。メルトダウンのライヴで共演したんだ(ザ・ダックワース・ルイス・メソッドといっしょに)。

ニック: ぼくらはストーカーみたいだったね。で、しまいには友だちみたいになってた。最初はほんとぎこちなかったけど、そのうち友だちになったよ。

- ザ・ディヴァイン・コメディはたぶんあなたたちが後継者のようなバンドみたいなかんじだと思いますが・・・

クリスティアン: ありがとう!その通りだね。

ニック: 実際、彼らはたぶんいちばん近いだろうね。オーケストラルでポップ、でも思慮深くて文学的で。

クリスティアン: ぼくらはふたりともニール・ハノンを崇拝してるんだ。うん、ぼくはね。よく知られてる通り、去年のアイヴァーズでぼくは酔っぱらいすぎてニールにすがりついて泣いてたみたいなんだよね。(酔っぱらったような声で)「あなたはどれだけ自分が重要なのかわかってない・・・」って。ぼくをそういうふうにさせる作家は数えるだけしかいないよ。ぼくはそのうちのひとりと仕事をしていて、別のひとりはたぶんニール・ハノンだろうね。

- ニールはいまだに「承認」のためにアルバムを作るごとにスコット・ウォーカーに送ってるそうです。あなたたちには誰かそういうひとはいますか?

クリスティアン: ブライアン・イーノ!

ニック: もともと「The Last of the Melting Snow」をニールに歌ってもらおうと頼んだって知ってた?

クリスティアン: それはスクープだ!

ニック: ぼくには歌えるようには思えなかった。ぼくはシンガーにはなりたくなかったからね。昔いろんなバンドで歌ってたけど、バートン・オン・トレントでの地元のライヴだけだったからね。それに歌うことは楽しめなかったから、彼に頼んだんだ。それにガイ・ガーヴェイにもね!

インタヴュー原文:Taking The Plunge: The Leisure Society

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