hue and cry

Radical Faceニュー・アルバム『The Family Tree: The Branches』発売!

ラディカル・フェイスの「家族」をテーマにした「The Family Tree」三部作の2作目『The Family Tree: The Branches』が先日ついに発売されました!

前作『The Family Tree: The Roots』からちょうど2年。あの熱狂の来日ツアーから1年半というタイミングは実に絶妙と言えるでしょう。いい具合だった渇望感を満たし、大きすぎる期待と高くあがったハードルを軽々と越えていく作品に仕上がっています。

『The Roots』が1800-1860年の架空の家族「ノースコート家」の物語をモチーフにしていたのに対し、本作は時間が進み、1860-1910年における次世代の一族をモチーフにしています。「ノースコート家」の物語にアメリカの歴史と自身の経験を糸のように絡み合わたストーリーテリングへのこだわりや執着には畏怖の念を感じるほどです。

前作において、特定の楽器しか用いないという意図的な制限を自ら課していましたが、物語内の時間が進むにつれ、本作では特にフル・ドラム・セットとエレクトリック・ギターの使用が目立つように、よりアップテンポのサウンドと発展的なプロダクションが前作とは対照的です。例によってベン・クーパーがほとんどひとりで作りあげたことにただただ驚愕するのみ。

10月の一ヶ月間、ぼくはこの作品を執着的に聴き重ね、ベンの意図をできるだけすべて汲み取ろうとして、19世紀のアメリカ史を調べたりして真剣に作品研究をおこなってきました。その結果が今回のライナーノーツなわけですが、調べれば調べるほど深みにはまっていくのはベン・クーパーという音楽家の才能であり、この三部作が持つ作品の強度なのだと思います。前作の時点ではわからなかったことは、この三部作が予想以上にはるかに壮大だということと、ベン・クーパーがいかに変態的かということです。

1869年、アメリカで最初の大陸横断鉄道が開通し、19世紀末にかけて鉄道の発展とともに加速度的な工業化・産業化が進み、1890年にはフロンティアが消滅。工業化に伴い商業が勃興し、農業国から工業国へと急速な変貌を遂げ、都市化も進んでいく。そんな時代にあって、本作の中心となるキャラクターは、当時続々と生まれていった巨大企業の工場で奴隷のように働く労働者階級の男。『The Roots』の家族には少ないながら救いも用意されていましたが、『The Branches』の家族には救いは一切用意されていません。来日ツアーで「もし英語がわからなくても、ぼくの音楽はすべて“サッド・ソング”だから」とベン・クーパーがライヴのたびに言っていたことを思い出します。

CDのパッケージはもちろん前作と同じハードカヴァーのブック型。実際に手に取っていただければ、その重厚感を感じていただけることでしょう。この作品は音楽自体がすばらしいのは言うまでもありませんが、コンセプトを共有することができればその魅力は倍増します。なので、できれば歌詞やライナーをぜひ読んでいただけるととてもうれしいです。ベン自身、じぶんの音楽がコマーシャルなものではないことを認めていますが、今回、ネットワークという世界的に大きなレーベルと契約したことでラディカル・フェイスを巡る状況が一変するといいなとぼくは思っています。

YouTubeで検索すれば全曲試聴できるので、ぜひ聴いてください(発売前からアルバムぜんぶアップされていたのは個人的になっとくいかないし、オフィシャルなものではないのでここでは紹介しませんが)。

最後に国内流通盤のボーナストラックについて。今回、とっておきのボーナストラックを用意しています(ダウンロード・コード)。ボートラで釣るような真似は本作にはふさわしくない気がしたので、ボートラ押しすることはしないと決めましたが、本編と同じくらいのボリュームのボーナストラックですので、こちらもぜひ楽しんでいただければと思います。

*Radical Face『The Family Tree: The Branches』詳細:http://www.inpartmaint.com/site/7041

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