Liricoニュー・リリース: Paranel『オールドテープ』〜最期に歌われるべき哀歌〜
Liricoがスタートしてからもうすぐ10年になりますが、今回はじめて日本人アーティストの作品をリリースすることになりました。
Paranelのニュー・アルバム『オールドテープ』。
ジャンルではヒップホップに分類されてきた彼が作ったはじめてのアコースティック作品です。ピアノと歌だけのこの作品は、Paranelの音楽をしっているひとにとってはだれもが驚き、そしてきっとこの作品が生まれたことをのちに納得するでしょう。
*詳細はこちらをご覧ください:
http://www.inpartmaint.com/site/16543/
彼との出会いはぼくがまだhueという異形のヒップホップ・レーベルを担当していた2006年のこと。もう10年も前のことです。彼もLOW HIGH WHO?というレーベルをはじめる直前かはじめた直後かという時期でした。共感とリスペクトを感じながら、同じ時代を生き抜いてきた同志というかんじです。
この作品のきっかけは5年前にさかのぼります。 2011年の夏、不可思議/wonderboyというLOW HIGH WHO?のアーティストが急逝してから2ヶ月後くらいのこと。ぼくは彼に提案しました。「nelくん、ぼくはきみの歌がすきだよ。だからシンガーソングライターっぽい作品をつくってみない?」。彼の返事はまさに快諾ということばがふさわしいものでした。
結局はピアニストMonk is my absoluteとの共作という方向性が決まり、2012年の秋に旧グッゲンハイム邸でピアノが録音されました。「音に震える洋館と、亡きものが染みついた感覚」はラディカル・フェイスの『Ghost』のコンセプトにも通じます(個人的に「Ghost」について歌うひとたちがすきなのですが、この作品にも「おばけの時間」という曲が収録されています)。そして2013年にできたのが「温度」という曲。そこからさらに3年がたってようやくアルバムが完成しました(5年も待つとはおもっていませんでしたし、内心では約束が果たされなくてもしかたないとおもっていました。いや、むしろこの作品の完成まではレーベルをつぶしてはいけないというおもいもありました。それはラディカル・フェイスの「The Family Tree」三部作と同様に)。
ぼくはきっかけをつくったにすぎませんが、この作品が生まれたことを誇りにおもいます。この5年さまざまなものを背負いながら苦心してきたのをしっているから。
この作品の紹介文の「かなしみを決して失いたくない人たちに永遠に愛される歌」という表現は、かつてスコット・マシューの作品のキャッチコピーで使ったものを再びよみがえらせてみました。「つないでいくこと」はぼくがずっと意識していることだから。音楽のスタイルはちがっていても、タマス・ウェルズやラディカル・フェイスなど、ぼくが選んできたLiricoのアーティストたちが共通してもつかなしみの感覚と同じものがParanelの歌にはあるとおもいます。
ぜひ手にとっていただけたらうれしいです。
Tags: Paranel
This entry was posted on 2016年 6月 15日 at 17:07 and is filed under Paranel. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.