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3/25発売 Radical Face『The Family Tree: The Leaves』、ベン・クーパーからのヒント①「The Road to Nowhere」
ラディカル・フェイスの「The Family Tree」シリーズは、何度も説明したようにある家族の物語が3世代にわたって繰り広げられています。その多くがベン・クーパー自身が説明しない限りはリスナーにはその物語のつながりをすべて理解するのは難しい内容でした。今回、シリーズの完結にあたり、彼はその物語に詳しくことばを費やしはじめています。まもなく「The Family Tree」のスペシャルサイトが公開されるはずですが、3/25の『The Family Tree: The Leaves』発売するまでのあいだ、ベンがfacebookに書いたことを紹介していこうとおもいます。
やあ、みんな。
これからニュー・アルバムのリリースまでにいくつかの曲をリリースしようとおもう。そうするほうがより楽しいからね。
最初の曲は「The Road to Nowhere」。これは前作のなかの「The Gilded Hand」の続編にあたる曲だよ。「The Family Tree」シリーズすべてを通して、登場人物のなかで現れる風変わりで奇妙な変異の要因となる血統が存在する。水のうえを歩く夢遊病の少女から、死んだ親類と定期的に会話する2人の兄弟にいたるまで。でもこれにはダークサイドがある。別の家族はその血統のなかに異常な性質を持っている。しばしば奇妙なふるまいをみせるこどもたちは見捨てられ、家を追われてしまう。そして最終的には街の工業地帯で働くことを余儀なくされる。「The Gilded Hand」(金ピカの手)はこういったこどもたちに職を与え、働かせる工場経営者のニックネームなんだ。でも彼だけしかこどもたちを実験につかうことはできない。彼はこの奇妙な血統を利用して、世界を変えることにとりつかれていた。その工場に働きに出たこどもたちの多くが二度と発見されることはなかった。
「The Road to Nowhere」は同じ工場で働く少年についての話だ。彼は眠りのなかだけに現れる能力をもっている。目覚めたときたまに彼はじぶんの部屋の壁に彼自身の手で書かれたメッセージを発見する。それを書いた記憶は彼にはないが、書かれたことは常に実現する。ある朝目覚めたとき彼の手には乾いた血がついていて、床に横たわるThe Gilded Handの死体をみつけた。彼が選んだわけではなかったが、彼はそこで働かされていたすべてのこどもたちを解放した。その後、多くのこどもたちは彼を精神的指導者のようにあがめはじめた。
(略)
すべてをついにおわらせることができてよかった。8年かかったよ!バカみたいだ。
みんなが元気でありますように。
■3/25発売 Radical Face『The Family Tree: The Leaves』予約受付中
■Radical Face Facebook page
Liricoニュー・リリース: Radical Face 『The Family Tree: The Leaves』〜 かなしみにまみれた汚れた血の物語の結末は〜
ついにこの作品の発売をアナウンスすることができてとてもうれしいです。そしてこの三部作すべてのリリースにたずさわることができて光栄におもっています。
ラディカル・フェイスことベン・クーパーが8年をかけて取り組んできた「The Family Tree」三部作の完結編『The Family Tree: The Leaves』が3/25についにリリースされます。
*詳細はこちらをご覧ください(今回、特に気合が入っています!):
http://www.inpartmaint.com/site/15540/
1800年代からはじまり1950年代にいたるまでの架空の家系「ノースコート家」をモチーフとし、アメリカの歴史とクーパー家自身の家系、そして自身の経験を絡め合わせたこのシリーズのうち、本作では1910年以降の時代をカバーしています。その時代に合った楽器を基本的に使用するというコンセプトでしたが、作品内時間が進んだここではより多くの楽器が投入され、これまででもっとも緻密に構築されたプロダクションや楽曲の展開はよりシネマティックになっています。ほとんどすべてをベンひとりで、彼のホームスタジオで作られていますが、最愛のパートナーであるヴィオラ・ダ・ガンバ奏者ジョシュ・リーのおおきな貢献は先行シングルの「The Road to Nowhere」ではっきりと感じることができるでしょう。
この曲は前作収録の「The Gilded Hand」とつながっている作品です。「The Gilded Hand」と呼ばれる男(これは初耳!)が経営する工場では、奇妙なふるまいをするこどもたちがそこに送り込まれます。「「The Gilded Hand」は「奇妙な血を利用して世界を変えようとしている。工場にいった多くのこどもたちは二度と戻ってこなかった」と、ベンはfaceboookに書いています。「The Road to Nowhere」は同じ工場で働く少年のことが歌われています。眠りのなかで特殊な能力を発揮する少年がある朝目覚めると、手には乾いた血があり、「The Gilded Hand」の死体を発見した彼はこどもたちを解放する…という話。タイトルのとおり、解放された彼らはしかしどこにもたどりつきません。
アルバムのなかでもっともアップテンポで繊細な美しさと激しさが絡まり合うこの曲はインパクトを与えるには十分ですが、アルバム全体はむしろより繊細なバランスで成り立っていると言えます。
今回、上記リンク先のアルバム紹介文をとても悩みながら書き上げました。本作のオリジナルのプレスシートで明かされたベンいわく”ダークで奇妙な”過去。その意図をいかにうまく伝えることができるのかと。先入観を与えすぎる恐れがあるのでここではこれ以上は書かないでおきますが、つづきはライナーノーツに書くので、アルバムを聴いたあとにぜひ読んでいただけたらとおもいます。
これから3/25の発売日までにミュージックビデオや、「The Family Tree」シリーズを網羅するスペシャルサイトも公開される予定ですので、『The Roots』『The Branches』と、先行シングル「The Road to Nowhere」を聴きながらもうしばらくだけお待ちください。
今回、国内流通盤には昨年2月の来日ツアーのなかから、東京公演のライヴレコーディング音源のダウンロードコードをおつけすることになりました。内容はこれからベンと詰めていきますが、光明寺の音源か、2公演からよりよいテイクを集めたものになる予定です。
なお、当然のようにCDのパッケージは重厚なハードカヴァーブックタイプ仕様になりますが、今回、全世界2000枚限定の初回盤のみとなり、それ以降はデジパック仕様になるとのことなので、ぜひ確実に初回盤を手にとっていただきたいです。
よろしくお願いいたします!
Radical Faceニュー・アルバム『The Leaves』完成!/サイド・アルバム『The Bastards』11/6リリース!
ラディカル・フェイスが2007年ごろから構想を練りはじめてから約8年。すでに2作がリリースされている「The Family Tree」三部作。1800年代からはじまり1950年代にいたるまでの架空の家系「ノースコート家」をモチーフとし、アメリカの歴史とクーパー家自身の家系、そして自身の経験を絡め合わせたストーリーテリングという、ベン・クーパーだからこそ挑戦できた一大巨編、その最終章『The Family Tree: The Leaves』が完成したとのうれしいニュースが届きました。
来日ツアーが行われたことしの2月。ベンはこう言っていました…「ジャクソンヴィルに戻ってからすぐにアルバムをおわらせる。5月ぐらいには完成するとおもうよ」。しかし、ツアーがおわってほどなくしてベンは沈黙しました。こまめにアップしていたインスタグラムからも姿を消し、facebookでのファンに対するアップデートもほぼなされることのないまま、時間だけが過ぎていきました。
つい先週書かれたfacebookでの最新のアップデートにはこうあります。「この秋には「The Leaves」がリリースされるはずだった。だけど、そのときぼくの人生はとてもダークで奇妙に変わった。いまもその問題に取り組んでいる」と。また8月にはこう書いています。「ながいあいだなにも書かなくてごめん。長く、ダークで、悲しくて、奇妙な物語があるんだ…」と。
いつかベン自身の口から語られるかもしれないし、あるいは明らかにはされないかもしれませんが、とにかく、ベンは残酷な現実と戦っている最中で、そして『The Leaves』はそんななか作られた作品です。いま、ぼくがこの作品について書けることはこれしかありません。リリースは年明けとのこと。どういうかたちになるかはまだわかりませんが、Liricoもこの作品をみなさんに届けることに全力を尽くしたいとおもっています。
ツアー嫌いのベンですが、来月から長いヨーロッパ・ツアーに出ます(ほんとうはこのツアーに合わせて新作をリリースする予定だったようです)。来日ツアーをともに回った最愛のパートナーでもあるヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のジョシュ・リーと、おそらくジェレマイア・ジョンソンとの3人編成のようです。あのすばらしかったアコースティック・セットに、マルチ奏者のジェレマイアが加わることでより幅が出ることでしょう。サポートはジェレマイアではなくリッコラスことリック・コラードのようです。
できれば、いっしょにツアーをまわりたいぐらい。
というわけで、そのヨーロッパ・ツアーに合わせて11/6にリリースされるのが、「The Family Tree」三部作の本編に入らなかった曲をフリーダウンロードでリリースする「The Bastards」EPシリーズをアルバムとしてまとめたサイド・アルバム『The Family Tree: The Bastards』です。
これまで『The Bastards vol.1』から『The Bastards vol.3』まで出ていて、こんど『The Bastards vol.4』も公開予定。現在、「vol.4」収録の新曲「Servants and Kings」が試聴できるようになっています。
『The Bastards vol.4』もフリーダウンロードで公開されるので、これまですべてダウンロードしてきた方は『The Bastards』収録曲全11曲はまもなく揃うことになります(『The Family Tree: The Bastards』はフィジカルでもリリースされるかはまだ不明)。
このサイド・アルバムを聴きながら、『The Family Tree: The Leaves』が届けられるまでゆっくり待ちましょう。いままで長いあいだ待ちつづけていたのだから、あと数ヶ月なんてきっとすぐですよ。
Radical Face Japan Tour 2015ツアー後記
(バレンタイン・デイ、旧グッゲンハイム邸の庭にて)
ラディカル・フェイスのツアーがおわって、もうすぐ1ヶ月が経とうとしています。今回は書くのはやめようとおもっていましたが、何年か経ってから懐かしめるときが来るかもしれないので、ツアーのことを短めに書き残しておきます。
時をさかのぼること昨年の6月、タマス・ウェルズのツアーがはじまる数週間前のこと、ほんとうにいろんなことが起こって、「これを最後のツアーにしよう!」と考えたちょうどそのとき、(年に数回しかメールをよこさない)ベン・クーパーからメールが届きました。「また日本に行きたい」と。ぼくは「なんでよりによってこんなときに。。。」と泣きそうになりながら返事をしました。「さいこうだね。いつがいい?」と。
だから今回のツアーのはじまりはあの6月なのです。ぼくのなかではつながっていました。光明寺をブッキングしたのもそういう理由からです。
ベン・クーパーとジョシュ・リー。あのアコースティック・ギターとヴィオラ・ダ・ガンバの編成はとてもスペシャルなものでした。はじまりのメールのあと、ふたりは今回のツアーのために、新たに曲をアレンジし直し、ツアー前の数ヶ月は毎日、朝と夜2時間ずつふたりで練習を重ねたといいます。
3年前、2012年のラディカル・フェイスのツアー。驚きをもって受け止められたジェレマイアとジャックとのバンド編成の高揚感はなにものにも代えがたかったとおもいますが、今回のアコースティック編成のほうがよりラディカル・フェイスの音楽の核心に近づくことができるものだったのは間違いありません。
元々、彼らのバンドセットは海外のタフなライヴ環境においての虚勢というか対抗策だったみたいですし、「Welcome Home」でいっしょに歌って騒ぎたいだけの客がいない日本のライヴ会場の環境がいかに恵まれているのか、彼らだけでなくぼくがこれまで担当したすべての来日アーティストが認めるものです。
ベンとジョシュが出会ったのは3年前の来日ツアーがおわった直後だそうです。今回のツアーでベンが随分たのしそうにしていたようにみえたのは、ジョシュの存在のおかげでしょう。最良のパートナーを得たベンのポジティヴな変化をそばで感じられた分、ツアー全体を通してぼくは感情的に満たされていました。
(2/15 at Nui./ photo by Ryo Mitamura)
ふたりの演奏はアンサンブルということば以上に、強い絆と信頼関係を感じさせました。ヴィオラ・ダ・ガンバはヴィオラではなく、チェロ+ギターみたいな楽器だとジョシュは説明してくれましたが、より低音をカヴァーできるあの楽器のおかげで、ベンはエレキギターのディストーションは必要ないんだと言っていました。ジョシュとふたりで演奏するのはすきだよ、とも。
「演奏がむずかしいから嫌い」とかMCで言ってた「Summer Skeletons」はぼくのリクエストでしたが、初日の光明寺ではじめてみたとき、ほんとうにつらそうで、ベンに申し訳なくおもいました。「リクエストしてごめんね、でもみんなぼくがリクエストしたことに感謝するとおもうよ」なんて軽口を伝えましたが、あの原曲においてベンがヴィオラ・ダ・ガンバを必要とした理由がなんとなくわかってうれしくなりました。それは「The Crooked Kind」も同様です。
そして、「We All Go the Same」。こちらもぼくのリクエスト。初日は時間が足らず、2日目からの演奏でしたが、ヴィオラ・ダ・ガンバとヴォーカルのみの歌い出しからいきなり鳥肌がたつ美しさ。「死ぬことについての歌だよ」とベンは毎回のように説明していましたが、いつだったか、「ぼくの曲はぜんぶ死んだひとについての歌だよ」って言っていたのも印象的です。
どの公演がいいとか悪いとか、いろんな環境がちがうので比較するものでもないですが、ぼくも、ベンもジョシュも満場一致で福岡公演と神戸公演がお気に入りでした。福岡公演の会場のパッパライライと、神戸公演の会場の旧グッゲンハイム邸の親密な雰囲気が、彼らが練習を重ねたじぶんの家のリビング・ルームと似ていたからふたりともリラックスできたみたいでした。特に福岡では、「The Moon Is Down」を3回も間違えたり、ミスだらけだったにも関わらず、奇跡的な夜だったと思います(タマス・ウェルズの2010年のsonoriumの夜をおもいだしました)。ライヴ全体のすばらしさは、演奏のクオリティだけではなく、会場の雰囲気やそこに充満する感情を含めてこそだということの証明でした。
SNSでもなんでも、ツアー中あったアーティストに対する反応がツアーがおわったら消えてなくなってしまうのが毎回ほんとうにいやで。もうみんなラディカル・フェイスのこととか忘れちゃったんだろうな、とかふとした瞬間におもうじぶんの厄介さもいやですが、そうした喪失感もツアーの醍醐味です。ベンとジョシュとともに過ごした3週間もの忘れがたい時間と、彼らが奏でた美しい音楽と、彼らが残した強烈な余韻とともにこれからの数年を生きていこうとおもいます。またいつか会えると信じて。
先に書いたとおり、Liricoとして、このようにツアーを行うのは今回が最後だとおもいます。でも、またどこかでお会いできたらと。
最後になりましたが、miaouのまゆみさん、ひろみさん、浜崎さん、aoiiちゃんと野口くん、Fly sound福岡さん、光明寺の住職さん、folklore forest大石さん、hello good music今村さん、Polar Mさん、spazio rita猫町さん、night cruising島田さん、Len/Nui.宮嶌さん、Republik河崎さん、papparayray山西さん、旧グッゲンハイム邸の森本さんと佐々木さん、加藤りまさん、三田村さん、吉村さん、その他関係者のみなさん、そしてすべてのお客様に厚くお礼申し上げます。
どうもありがとうございました。
そして、ごめんなさい。
(ラディカル・フェイス『The Family Tree: The Branches』のCDの最初のページに書かれた「I’m sorry for everything」ということばのように)
Radical Faceジャパンツアー経過報告
(撮影:吉村健)
2/7からスタートしたラディカル・フェイスの来日ツアー。2日間のオフをはさみ、あしたの名古屋公演から再開します。ここからは5日連続。なんとかみんなでがんばります。
これまでヨーロッパやアメリカでは2000人くらいのキャパの会場でライヴを行ってきたものの、居心地の悪さを常に感じていたとのこと。「ぼくの音楽は大きな会場には合わない」と言っていました。今回はじめての試みとなるヴィオラ・ダ・ガンバとアコースティック・ギターのデュオ編成の演奏、そしてこの編成のために改めてアレンジし直されたラディカル・フェイスの楽曲群を実際に聴いてみると、今回の会場選びは間違いではなかったな、と手応えを感じています。
Radical Face – Along the Road (live in Hamamatsu, Japan)
iPhoneで撮った画質も音質もよくない映像ですが、浜松公演の映像をアップしてみました。もちろん実際の演奏はこれよりずっとすばらしいのですが、参考にはなるかと。
とても静かで美しい演奏です。
残り5公演、どこかで会えたらうれしいです。
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