hue and cry

Posts Tagged ‘Tamas Wells’

タマス・ウェルズ「Volatility of the Mind」ツアー2014予約受付中!

6月に行われるタマス・ウェルズの来日ツアーの詳細です。予約も開始しております!

Tamas Wells ‘Volatility of the Mind’ Tour 2014

【福岡公演】

■日時:2014年6月26日(木)19:00開場 / 20:00開演
■会場:papparayray -パッパライライ (福岡市中央区赤坂 2-2-22)
■料金:前売 3,500円 / 当日 4,000円(共にドリンク代別途)

■出演:
Tamas Wells

■オンライン予約受付:http://republik.jp/reservation
■メール予約受付:reservation@republik.jp
■電話予約 : パッパライライ 092-406-9361 (受付時間:11:30 – 18:00、木・金 休)
※メール予約 及 電話予約の際は、お名前・ご人数・連絡先をお知らせください。

■主催:Republik

【神戸公演】

■日時:2014年6月27日(金)19:00開場 / 19:30開演
■会場:旧グッゲンハイム邸 (神戸市垂水区塩屋町3-5-17)
■料金:前売 4,000円 / 当日 4,500円

■出演:
Tamas Wells
n mark.

■メール予約受付:Lirico
e-mail: ticket@inpartmaint.com
(件名を「6/27」とし、公演日/お名前/連絡先/人数をメールください。予約完了のメールを返信いたします。)

【東京公演】

■日時:2014年6月28日(土)17:00開場 / 17:30開演
■会場:下北沢・富士見丘教会 (世田谷区代沢2-32-2)
■料金:前売 4,000円 / 当日 4,500円

■出演:
Tamas Wells
n mark.

■PA: 福岡功訓(Fly sound)

*定員80名様限定のクワイエット・セットです。

■メール予約受付:Lirico
e-mail: ticket@inpartmaint.com
(件名を「6/28」とし、公演日/お名前/連絡先/人数をメールください。予約完了のメールを返信いたします。)

【東京公演】

■日時:2014年6月29日(日)16:30開場 / 17:00開演
■会場:原宿・VACANT (渋谷区神宮前3-20-13)
■料金:前売 4,000円 / 当日 4,500円(共にドリンク代別途)

■出演:
Tamas Wells
Chris Lynch (Broken Flight)

■PA: 福岡功訓(Fly sound)

■メール予約受付:Lirico
e-mail: ticket@inpartmaint.com
(件名を「6/29」とし、公演日/お名前/連絡先/人数をメールください。予約完了のメールを返信いたします。)

■eチケット:tixee : https://tixee.tv/event/detail/eventId/4966

<問い合わせ先>
インパートメント 03-5467-7277 | lirico@inpartmaint.com

タマス・ウェルズ最新作『On the Volatility of the Mind』詳細

【速報】Tamas Wells 来日ツアー決定!

ニュー・アルバム『On the Volatility of the Mind』が本日ついにリリースされたタマス・ウェルズの5度目となる来日ツアーが決定!

Tamas Wells
‘Volatility of the Mind’ Tour 2014

 
◆6.26(木)福岡 papparayray
◆6.27(金)神戸 旧グッゲンハイム邸
◆6.28(土)東京 富士見丘教会
◆6.29(日)東京 VACANT
 
*詳細は近日ご案内いたします。

『On the Volatility of the Mind』詳細
(ウェブ購入特典として『Live at Vacant』のCD-Rを差し上げます!)

Liricoニュー・リリース:Tamas Wells『On the Volatility of the Mind』

大変お待たせいたしました。タマス・ウェルズの5thアルバム『On the Volatility of the Mind』の詳細をお伝えしたいと思います。

*詳細はこちらをご覧ください:http://www.inpartmaint.com/site/7970/

ご覧の通り、アートワークも、『心の不安定さ』というタイトルもとてもダーク。一方でサウンド面では今回、アコースティック・ギターの使用を封印し、代わりにエレクトロニック・ギターとキーボード中心のプロダクションを行っていて、その新鮮さ、アートワークなどとのギャップに多くの方が最初は驚かれるかもしれませんね。

6年間のミャンマーでの生活を終え、メルボルンに戻り、“地理的な孤立”が解消されたことで、個人的には新作は友人たちとともに作り上げていくものだと想像していましたが、意外にもとてもパーソナルな作品となっています。ネイサン・コリンズ以外の主要なバンドメンバー、アンソニー・フランシスとキム・ビールズは不参加。代わりにクリス・リンチ(Broken Flight)がギターを弾いています。コンセプトは全く違えど、作品の性格や構造的には『Two Years in April』と似ているかもしれません。

楽器のチョイスに加えて、歌い方やリリックの書き方まで変えた本作。三人称を用いることが多かったリリックは今回、全曲一人称で歌われていて、より直接的かつパーソナル。今回の内容をいままでの手法で歌っていたらと想像すると恐ろしくも感じるほど。「本当に悲しい歌こそポップに歌わなければならない」ということなんだと思います。

リリースは3/13の予定です。Liricoウェブショップでは予約特典に前回来日時の東京公演のライヴ音源を収録したCD-Rをおつけすることにしました!よろしくお願いいたします。

Tamas Wells Japan Tour 2011 後記(後編)

12/9(金)

4度の来日のなかでもっともコンパクトなツアー。2日目にしてツアー・ファイナルです。この日はサウンドチェックの前にラジオのインタヴューの収録。大阪のFM802の「BEAT EXPO」からのオファーで、インタヴューとスタジオ・ライヴの収録が行われました。

日本のラジオのインタヴューはこれで3度目のことでしたが、スタジオ・ライヴははじめてのこと。「When We Do Abigail」と「True Believers」をキムのコーラスを交えて演奏しました。ちなみに収録のあいだ、アンソニーはというと、スタジオの外で待っていました。「なかで座って待ちなよ」って言ったら「いや、いい」って。気づいたらどこかへ消えていました(笑)

インタヴューではミャンマーのまじめな話からだいすきなお好み焼き(と、きびだんご)の話、さらにはこどもの話まで飛び出し、終始なごやかな雰囲気で進んでいきました。「ぼくの娘はぼくの曲は1曲だけ好きな曲があって、あとはきらいなんだ」。そういえば、タマスの娘はもしかして彼のライヴをまだ観たことないのかなと気になって訊いたところ、一度だけあるそうです。ミャンマーで行われた最初で最後のタマス・ウェルズのライヴ。まさに幻のライヴの存在を、ぼくはそのときはじめて聞いたのでした。フランスの大使館かなにかの主催だったそうで、「とても奇妙なライヴだったよ」と、タマス。

最初で最後、と書いたのは、ラジオのインタヴューでも話していましたが、ことしの5月くらいに彼はついにミャンマーを離れ、オーストラリアに戻るそうなのです。彼らの親からの、「孫の近くでいたい」という要望からで、彼は「家族みんなで暮らしていくべき時間が来たんだ」と言っていました。「じゃあ、オーストラリアでもライヴをしやすくなるね」ってぼくが言ったところ、彼は目を丸くして「そっか・・・家族や友だちたちと会うことばかり考えてて、オーストラリアでの音楽活動のことなんてこれっぽっちも考えてなかったよ」と答えました。いかにも彼らしいです。いまはタスマニア島で暮らすネーサンももうすぐメルボルンに戻るそうなので、実に8年ぶりにタマス・ウェルズ・バンドのみんながメルボルンに揃うときがもうすぐ来ようとしています。「じゃあ、ぼく、メルボルンに遊びにいくから、そのときライヴやってよ」。「いいね。じゃあ、シンはDJやってよ」とアンソニー。「OK、でもサッド・ソングしかかけないけどね」。

大阪でのライヴは2007年の最初の来日以来のこと。今回の会場は難波にあるartyard studio。artyard informerというフリー・ペーパー/ウェブジンを運営。かつて、スコット・マシューの来日時にインタヴューを行っていただいた縁があります。ギャラリーなどが集まったアート・ビルの一角にあるホワイトキューブ状の清潔な空間。

オープニング・アクトとして演奏してくれたのは、Weather SpoonというバンドのヴォーカリストでもあるトラノさんのソロTorenoによるギター弾き語り。Dakota Suiteを愛する彼は日本人アーティストでは珍しくLiricoとも共鳴するシンガー・ソングライターなのです。この日も期待に応えてくれていたと思います。「Lapis Lazuli」は名曲。

続くキムはきのうと同じセットでしたが、1曲違っていたのは、翌日に結婚式を控える友人へ捧げたウェディング・ソング。昔、結婚した親友のために作った曲らしいです。この話は後述しますが、こういう彼のマメさは正直タマスにはないものですね。

そして、いよいよタマス・ウェルズの登場。この日も会場がざわざわしてるなか、さらっと「Fire Balloons」を演奏しはじめました。撮影した映像観ると特に気になったんですが、次からはもっとタメを作るように注意しておきます(笑)

結論から書くと、この日も東京公演と同じセットで、「Open the Blinds」を追加した点のみが変更点です。ツアーの前には新曲も演奏すると言っていたのですが、残念ながら結局のところ新曲が演奏されることはありませんでした。

この日は特に後半に演奏した曲がどれもよかったと思いました。「True Believers」「England Had a Queen」「Lichen and Bees」という流れはとても心地よかった。「True Believers」は昨年はタマスのソロで演奏していましたが、今回は3人で。今回しばしば観られた光景ですが、ギターのリフをタマスとキムが向かい合って弾き合うのはこれまでのライヴではあまりなかったことなので、なんだか新鮮な気分。みんなの表情がはっきりと見えるのもちいさな会場だからこそでしょう。ソノリウムのときのような緊張感はまったくなかったですが、とても親密な雰囲気に包まれました。

「England Had a Queen」。昨年のソノリウムのライヴでアンソニーが入るところを間違えた事件がありました。ことしのアンソニーはそれをネタに、タマスとキムのほうをニヤニヤ見ながら「さあ、間違えるぞ」ってかんじで違う箇所で弾くポーズをとっていたのは最前列のお客様なら気づかれたかもしれませんね。初日はまだタマスもキムも苦笑して反応してあげてましたが、この日はガン無視(笑)。この一連のネタは映像に残っていますが、恥ずかしくてお見せできるようなものではありません・・・。ちなみに「For the Aperture」のバンジョー・ソロ、この日は思いっきりミスって会場のみんな爆笑・・・。あのひとはほんとうに憎めない男なのです。・・・いつか完璧なライヴを見せてくれる日が来るといいな。

なんだかアンソニーのことをおとしめてばかりなので、フォローしておかないと。特に初日でとても効果的だったあの映像(VACANTのプロジェクターはすごくよかった)。写真が少しずつ変化していく美しい作品ですが、あれは実は彼の作品なんです!すごいね、アンソニー!

本編を締めたのはザ・ビーチ・ボーイズ「Do You Wanna Dance」のカヴァー。彼にとってどの曲をカヴァーするのかというのは、ぼくらが思っているよりもずっと難しい問題らしく、その基準とは「クラシックなメロディーを持っているか」ということだそうです。「Moonlight Shadow」と「Do You Wanna Dance」はそういった厳しい戦い(?)の末に勝ち残った美しい2曲。その場でリクエストをしてもすぐに演奏できるほどの器用さは彼にはないので、タマス・ウェルズへのリクエストは1年前にお願いします(笑)彼は歌詞を覚えるのが得意ではないのだ。歌詞以外に関する記憶力はすごくいいんですけどね。


Tamas Wells – Do You Wanna Dance? (Live at artyard studio)

アンコールの「When We Do Fail Abigail」は東京と同じアカペラ・ヴァージョン。これは今後、彼らの新しい武器として定着していくんじゃないでしょうか。
平日開催だったため、両公演とも集客は思うようにはいきませんでしたが、2011年という年の締めくくりをタマス・ウェルズのライヴで行えたのは、きっと多くのかたがたにとって、このうえない幸福だった、そんなライヴだったにちがいないと信じています。ぼくは今回で彼のライヴを16回観たことになり、おそらく世界でいちばんタマス・ウェルズのライヴを観たひとのひとりだと思いますが、何度観たとしても新鮮さを失わない、いつも魔法を感じさせる彼の歌を、どうすればよりたくさんのひとに聴いてもらえるか、それが大きな悩みです。ツアーを終えてから気づいたのですが、今回がぼくが担当した10回目の来日ツアーでした。5年で10回。年に2回と考えるとすごく多い気がしますが、とりあえずひと区切り。その10回のツアーで経験したことやいろいろなひとたちとの大切な出会いすべてがかけがえのないものです。


Tamas Wells – When We Do Fail Abigail (Live at artyard studio)

今回の公演にお越しいただいたみなさまや、VACANT、Fly sound、artyardのみなさま、FM802のみなさん、通訳をしていただいたyasさん、その他ツアーに関係したみなさまがたばかりでなく、これまでの10回のツアーに関わったすべてのかたがたに感謝したいと思います。

ツアーをやるときはいつも「これが最後」という覚悟をもって臨んでいます。生半可な思いではないからこそ、喜びや感謝も大きいのです。震災以降、その思いはより強くなりました。会えるときに会いたいひとに会おう。それはいまやみなさまの頭のなかにあることだと思います。タマス・ウェルズの「次」はいつかわかりませんが、3月にはラディカル・フェイスのツアーが決まっています。たくさんのかたがたとお会いできることをたのしみにしています!

番外編へとつづきます。

set list 2011.12.09 @ 難波 artyard studio
1. Fire Balloons
2. Vendredi
3. The Crime at Edmond Lake
4. Your Hands into Mine
5. Moonlight Shadow
6. Thirty People Away
7. Valder Fields
8. Fine, Don’t Follow a Tiny Boat for A Day
9. Nowhere Man
10. Signs I Can’t Read
11. The Opportunity Fair
12. For the Aperture
13. Writers from Nepean News
14. Open The Blinds
15. Melon Street Book Club
16. True Believers
17. England Had a Queen
18. Lichen and Bees
19. Do You Wanna Dance

[Encore]
1. When We Do Fail Abigail
2. Reduced to Clear

- Tamas Wells Japan Tour 2011 後記(前編)

Tamas Wells Japan Tour 2011 後記(前編)

12/6(火)

12/5、月曜日。タマス・ウェルズからメールが。「ごめん。ぼくもいま知ったんだけど、日本に着くの、水曜じゃなくてあしたの夕方みたい!」と。どうやら中国のレーベルがチケットを手配したので、勘違いがあったようです。

空港まで迎えにいく都合もつかなかったし、もう何度も来てるので、今回は渋谷まで自力で来てもらうことにしました。

ほんとうなら9月末に行われる予定だったツアー。ミャンマーのVISAの都合で延期となったことで、前回からちょうど1年後におこなわれることとなりました。1年ぶりに会う、タマス・ウェルズ、キム・ビールズ、アンソニー・フランシスの3人の、永遠の人懐っこい笑顔。「去年よりも寒くてうれしいよ」と、タマス。

夕食は天ぷら。もしかしたら遠慮してるだけかもしれないけど、このひとたちは食に対する貪欲さがあまりなくて(お好み焼き以外)、「なんか食べたいものある?」って訊いても、「日本の食べ物はなんでもおいしいから任せるよ」といつもそればかり。何かリクエストしてもらったほうが助かるんですけどね。いままで食べたことないもの・・・ということで、結局、天ぷらにしました。クリス・ガノが来日したときにも行ったなぁ。

VACANTでのライヴのMCで話していましたが、天ぷらのつゆをお茶と間違えて飲むという今回のツアーで最初の天然ぶりを発揮したタマス。前回のツアー後にタマスとキムにはそれぞれ子どもが生まれたので、子どもの話や共通の知り合いの話、そして中国ツアーのことなどを。中国の音楽市場はいま急速に変化していて、そんな流れのなかでタマス・ウェルズの音楽が完璧にハマったことはほんとうに幸運でした。公演によっては800人くらい動員できるほどで、中国ツアーの成功のおかげでこうして日本にも来てもらえるわけで、ぼくらにとってもそれは幸運なことなのです。みんな仕事があって長くツアーできないので、土日の集客しやすいスケジュールが中国ツアーに取られるのは仕方のないことではありますけど。


12/7(水)

15時ごろにぼくらのオフィスにやってきた3人はやけに元気でした。中国ツアーは5日間の日程のうち、毎日ライヴがあり(着いた日の夜にもあったらしい!)、毎朝5時起きで移動しないといけない(なにせ広いので)というハードなツアーだったので、オフというものがこれほどひとを元気づけるのかということを熱弁されました。関係ないですが、バンドは中国ツアーを経験すると大きく成長するみたいですよ。常識の枠をこえたことがいろいろと起きるので、ちょっとやそっとのことでは折れない精神力を手に入れれるそうです。

「こんやどこかでシークレット・ライヴできないかな?」という彼らの突然のおねがいにぼくや先輩は振り回されたわけですが、結局ふさわしい場所が見つからなかったため、「代わりにセッションを撮影してネットにアップするのはどう?」というぼくの提案を彼らは喜んでくれました。

「ホテルに戻って撮影場所を考えてくるよ」と、彼らの熱意にぼくは正直かなり困惑しました。いきあたりばったり。ある意味ではツアーの醍醐味です。夕方、彼らを迎えにいくと、タマスの部屋に集まって練習中。「すごく狭い場所で撮影したい。電車のなかとかタクシーのなかとかエレヴェーターとか」。電車は絶対むり、タクシーはお金がかかる。というわけで、とりあえずホテルのエレヴェーターで撮影して、途中でスタッフに止められたのはまあ、当然のことですね。その後、ホテルをあとにし、渋谷の某バーで撮影させてもらったのですが、そのときの模様は以前ブログで紹介したとおりです。




12/8(木)

天気はあいにくの雨でしたが、雨の日のタマス・ウェルズもまた格別。日本ではたぶん15回くらいライヴを行なっていますが、雨だったのはぼくの記憶ではこれが2度目のことで、さらにこれまでで一番寒い日でした。30℃を下回ることのない熱帯の国で長年過ごす彼にとっては貴重な経験です。

でも、「こんどは雪がみたい。北海道にいってみたい」とか言っちゃうのです。この男は。「いつか極地をツアーしてみたいね。モンゴルからシベリアへいって、それから北海道・・・」。「ブッキングは手伝うけど、ぼくは一緒にいかないからね」。

今回の会場は原宿のVACANT。実は2010年の東京公演でもブッキングしようとしたのですが、そのときは残念ながら空いていなかったのです。今回もPAはFly soundさんにお願いしました。1年前とほとんど同じセットでしたし、エンジニアの福岡さんも彼らの特徴をよくわかっていらっしゃるので、サウンドチェックはすぐにおわるかと思いきや、結局は開場時間のギリギリまでかかってしまいました。いまさら気づいたのですが、彼らは時間があればあるだけ入念にサウンドチェックをおこなうタイプのようで、こちらから止めないかぎりはきっと永遠にやりつづけていたことでしょう。ライヴ前はちょっと神経質になるのかもしれないとずっと思ってたのですが違いました。音楽に対して真摯なだけなのですね。

予定より少し遅れて、オープニング・アクトのキム・ビールズがスタート。キムは前回と違い、アコースティック・ギターではなく、エレクトリック・ギターでの弾き語り。彼の友人である職人が作ってくれたという自慢のギターです。プレスからあがったばかりのニュー・アルバム『Tambourine Sky』からの曲を中心としたセット。一年前よりも歌声が伸びやかでよくなっていると感じました。新作もほんとうにすばらしいのです。

短いインターバルののち、いよいよタマス・ウェルズ。今回は最初から3人揃っての登場です。前回からそれほどあいだをあけないライヴ。ぼくはもちろん彼らのパフォーマンスを信頼しているので、事前にあれこれ提案することはありませんでしたが、彼らなりに変化を加えることで、オーディエンスを飽きさせないように工夫してきました。キムのエレクトリック・ギターもそうですが、タマスは今回ハーモニカを持って来ました。これまでに披露したことのない曲を演奏し、さらに多くの曲で新しいアレンジを聴かせてくれました。

スタートはなんと「Fire Balloons」。前回、sonoriumのアンコールでようやく初披露したタマス・ウェルズ史上、1、2を争う名曲を1曲目にもってきました。今回もそうでしたが、タマスってわりといつも淡々とライヴをはじめるんですよね。中盤、ささやくように歌うタマスの声にいきなりうっとりしてしまいました。

「Vendredi」を経て、「The Crime at Edmond Lake」。新しいアレンジで演奏された曲のうちのひとつですが、この曲の終盤のアンサンブルはこれまでにない高揚感を与えてくれました。正直なところ、最新作『Thirty People Away』のデモを最初に聴いたとき、個人的にこの曲の評価は高くはありませんでしたが、いまでは洗練されたタマス・ウェルズのいまのサウンドの魅力をもっとも表現した作品だと思っています。ツアーを経て、タマス・ウェルズも、タマスの曲も変化し、成長していっていることを感じさせてくれた曲でした。

「今回は新しいカヴァーも演奏するよ」と事前に聞いていたものの、何をやるかまでは聞かないでいました。楽しみはとっておきたかったですからね。新しいカヴァー2曲のうちのひとつを5曲目に配置してきました。「Moonlight Shadow」。マイク・オールドフィールドの1983年の作品。ぼく自身、この曲のことは知りませんでしたが、タマス・ウェルズの新曲だと勘違いしたひともいらっしゃったのではないでしょうか。あとで原曲をYouTubeで聴きましたが、全然違う雰囲気で驚きました。タマス・ウェルズが歌うとタマスの曲になるんですよね。

今回が初披露となった最新作のタイトル・トラックでもある「Thirty People Away」から「Valder Fields」。このタマス・ウェルズのなかでもいちばんの人気曲はいつも終盤に配置されていましたが今回は前半に持ってきましたね。「じぶんの曲でどれがいちばんすき?」っていつか質問したとき、なんかうまくはぐらかされたのを覚えています。「Valder Fields」はきっと上位ではなくて、レディオヘッドでいう「Creep」みたいなものなので、けれどタマスはいいひとなのでこうして演奏してくれるんだと勝手に思っています。正解は知りませんが(笑)

アンソニーとキムがはけ、タマスのソロに。キムのエレクトリック・ギターに持ちかえました。ライヴ・アルバム『Signs I Can’t Read – Live at sonorium』の紹介。「あのとき誰か風邪ひいてたよね?ライヴ・アルバムをよく聴いてみて。誰かの咳とかくしゃみとかいろいろ入ってるから。きょうは誰か風邪ひいてない?誰もひいてない?よかった」といういつものなごやかな語り。

「31年前のきょう、ジョン・レノンが撃たれた。この曲はビートルズの曲だよ」と言って、歌いはじめた「Nowhere Man」。そういう特別な日だからこそ、余計に胸に響きました。

「Nowhere Man」を歌い終え、彼は静かに、ゆっくりと語り始めました。

「2008年5月2日、局所的な嵐がミャンマーの隣のベンガル湾に発生して、6/9にはその嵐はカテゴリー4のサイクロンとなった。そのサイクロンはミャンマーを横断していった。最初はミャンマー南部の沿岸を直撃して、風速時速200kmもの巨大なサイクロンによって発生したものすごい津波がその地を洗い流してしまったんだ。津波は何百もの村を洗い流して、一夜にして14万人もの人々が亡くなった。

生き残った人々は洪水が迫ってくるとき木につかまったことで生き残った。朝、洪水がひきはじめたとき、そこには数えきれないほどの死体があった。ある女性はじぶんの赤ん坊を生かすために木をよじ登り、てっぺんに赤ん坊をくくりつけ木を降りた。彼女も、彼女の家族もみんな亡くなったけど、その赤ん坊は生き残り、いまも生きている。

だから、ミャンマーの人々と、日本の人々はお互いに、ほんとうに理解し合えると思う。日本の地震や津波のことを聞いて、ぼくはとても悲しかった。みんなとよく似た気持ちをぼくも持っている。次の曲は「Signs I Can’t Read」。ミャンマーについての曲だよ」

昨年、地震が起きて、ぼくが担当するはずだった来日ツアーの話がいくつも流れていくなか、そういうときだからこそ日本にいって歌いたいと言ってくれたタマス・ウェルズ。確か4月くらいのことだったでしょうか、そのときは彼のそんなことばにとても勇気づけられましたが、それは彼にとってほんとうに深い共感からだったのですね。「Signs I Can’t Read」が彼がとても大切にしている作品だということは言うまでもありません。翌日の打ち上げのときだったか、「grace」ということばのことを話していて、教会で働くキムが教えてくれました。「graceということばはキリスト教にとってとても大切なことばなんだ」と。慈悲。つまり慈しみと憐れみ。ぼくらにとっての「慈悲」とはもしかしたら意味は異なるのかもしれませんが、タマス・ウェルズの音楽にはそういった他者への愛情が根底にあるような気がしてなりません。


Tamas Wells – Signs I Can’t Read (Live at sonorium)

それにしても、タマス・ウェルズのライヴのあの静かさはなんなのでしょうね。演奏がおわって、お客さんの拍手が入るまで必ず3-5秒程度の沈黙が生まれるのです。それは2007年の最初の来日、あの金沢での公演からずっとです。どの公演でも必ず。最初は拍手が起こらなくてちょっと焦ったりもしましたが、いまではもう慣れました。他のどんなアーティストのライヴでも経験したことのない、そんな5秒間はぼくにとって世界でもっとも静かな5秒間であり、もっとも美しい沈黙の時間です。

今回のいちばんのハイライトは、間違いなく、アンコールで演奏した「When We Do Fail Abigail」でしょう。アカペラによるタマスとキムのハーモニー。途中からギターが入っていく今回のアレンジは、日本に来てから考えられ、サウンドチェックで練習はしたものの、ほぼぶっつけ本番で披露されましたが、ほんとうに美しかったです。ほんとうに。アンソニーとキムのふたりで演奏された「Melon Street Book Club」も、このアカペラも中国では演奏されていません。静かに、真剣に演奏を聴いてくれる日本だからこそのアレンジであり、そういう意味では日本のオーディエンスへのリスペクトを、こういうかたちで彼らが示したのだと言えるかもしれませんね。

今回こそは短くまとめるつもりでしたがずいぶんと長くなってしまったので、東京公演の分はこのへんで。後編へつづきます・・・。


※ライヴ中の写真はすべて三田村亮さんにお借りしました。

set list 2011.12.08 @ 原宿 VACANT
01. Fire Balloons
02. Vendredi
03. The Crime at Edmond Lake
04. Your Hands into Mine
05. Moonlight Shadow (Mike Oldfield cover)
06. Thirty People Away
07. Valder Fields
08. Fine, Don’t Follow a Tiny Boat for a Day
09. Nowhere Man (The Beatles cover)
10. Signs I Can’t Read
11. The Opportunity Fair
12. For the Aperture
13. Writers from Nepean News
14. Melon Street Book Club
15. True Believers
16. England Had a Queen
17. Lichen and Bees
18. Do You Wanna Dance (The Beach Boys cover)

[Encore]
1. When We Do Fail Abigail
2. Reduced to Clear

- Tamas Wells Japan Tour 2011 後記(後編)

You are currently browsing the hue and cry blog archives.