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Nomadニュー・アルバム『No Magic』インタヴュー
昨年12月、ノマドの3年ぶりとなる新作『No Magic』がMarathon of Dopeよりフリー・ダウンロードというかたちでリリースされました。
前作『Cats and Babies』でシンガー・ソングライターとして開眼した彼がまたヒップホップ・ビートへと戻ってきた作品。果てのないイマジネーションとフェアリー・ヴォイスを持ったスペシャル・ワン。決しておとなになりたくない青年がこの作品で語るのは、若さと初期衝動でしか生まれない「魔法」を失ったときにこそ生まれ出す世界でした。
よりたくさんのひとに聴いてもらいたいからこそ、フリー・ダウンロードでのリリースを決めた彼の願いが叶うことを、彼とともにこの5年間を歩んできたぼくも願っています。まだ未聴のかたはぜひ聴いてみてください。下記のリンクからフリー・ダウンロードできます(要メアド)。
Nomad “No Magic” | Marathon of Dope
以下は『No Magic』に関するインタヴューです。彼らしいナイーヴさが伺える内容になっています。まわりがどんどん音楽活動をやめていくなか、「子どもができたことで、じぶんの音楽に対する情熱がなくならなかったという事実がうれしかった」と語るノマド。かつて彼は「Shadowanimals」のなかでこう歌っていました。
「We keep going every night and day. we never quit」と。
Interview with Ruben Kindermans
- まずはじめに、3rdアルバム『No Magic』のリリースおめでとうございます。前作『Cats and Babies』から3年かかりましたが、製作はどれだけ大変でしたか?
ぼくにとって、新しいアルバムの正しいサウンドを見つけることはいつも大変なことなんだ。山ほどの曲を作りはじめてみたけど、いろんな理由で完成しなかった。でも、ニュー・アルバムのリリースまでもうこれ以上長いあいだ待ちたくなかった。それにふたりの子どもたちが一日中寝てるときに家で音楽をつくるのは簡単なことじゃないんだよね。
- 『Cats and Babies』はよりシンガー・ソングライター寄りの作品でしたが、『No Magic』では『Lemon Tea』のサウンドに戻ってますね。『Lemon Tea』と『Cats and Babies』の中間・・・2ndのより洗練されたソングライティングを1stの手法に落とし込んだ、というのが第一印象でした。この変化について教えてください。
『Lemon Tea』と『Cats and Babies』をミックスしたアルバムを作ることは意図したことだったよ。『Cats and Babies』にはいまもとても満足してるんだけど、ヒップホップの影響のあるサウンドじゃなくて、独自性は少なかったと思ってる。それとライヴをやったとき、ビートが恋しいと思ったりもして、だからビートをじぶんの音楽に取り戻すことにしたんだ。
- この作品も以前の作品のようにじぶんの部屋で作ったんですか?
うん、いまもまだぜんぶ自分の家でレコーディングしてる。そのほうがプレッシャーが少ないから家でのレコーディングのほうがすきだよ。音楽をつくるときはムダに時間を使って実験してみたいんだ。
- リリックはどこで書きますか?あなたは確かいつもはメロディーを先に書くみたいですが、どのようにリリックを書いていますか?
いつもそんなにたくさん書き留めないんだ。いつも意味のないことばでメロディーを歌いはじめる。メロディーを50回くらい何度も何度も歌ったとき、正しいことばがおのずと現れるんだよね。
- あなたは「shadowanimals」で「ノマドを見てみなよ・・・やつは魔法をつかう」と歌っていました。でもこのアルバムのタイトルは『No Magic』ですね。これはとても示唆的でなにかを象徴しているように思えました。ノマドは魔法を失ってしまったんでしょうか?このアルバム・タイトルを選んだ理由を教えてください。
これは若いミュージシャンのままでいるための魔法についての話。ぼくらは音楽を作りはじめて、その音楽はほんとうに特別なものだった。あんまりあれこれ考えずにただ音楽を作って、それなりの成功もあった。
でも、年をとって、すばらしい音楽を作ることが十分ではないと気づく。音楽で成功するためにはビジネスマンになる必要がある。ぼくはじぶんが30歳になって、すべてがとてもシリアスであるという事実もすきじゃないんだ。かつて、親のコンピューターと、安っぽいマイクで音楽を作ったときに見つけた、最初のころの魔法、そういうものをぼくはもう失ってしまったんだ。
- 「Hajani」はぼくのお気に入りです。この曲は2010年のmarathon of dopeのサンプラーに収録されていました。アルバムのなかで最初にできた曲なんですかね?「I say Hajani Hajani…」というリリックはぼくには呪文のように聞こえます。どういう意味なのか教えてください。
「Hajani」はぼくの造語なんだ。ライヴで演奏するときに、お客さんに言ったんだ。これは幸運をもたらし、病気になったり落ち込んだりしたとき、癒してくれることばだと。この曲はジョークのつもりだったんだけど、「Hajani」ってことをばをステージで歌ったら、ほんとうに魔法みたいに思えたよ。
「Son, if you don’t know」や「Echo」がこのなかでいちばん古い曲だね。「Hajani」は元々アルバムに入れるつもりはなかったんだけど、みんながとても気に入ってくれてたから、入れることにしたんだ。
- あなたはゴーストの名前を「miyagijo(ミヤギヨー)」と名付けましたね。ぼくらは2008年のツアーのとき、「ミヤギ」(仙台)に行ったけど、それは気づいてましたか?また、最後の曲はタイトルが「Asian Dreams」で、曲もオリエンタルな雰囲気です。これらの曲を作るとき、日本のことは頭のなかにありましたか?
ミヤギが日本の地名だと知ってたよ。そのあとに「o」って文字を入れたのは、日本にいたとき、日本のみんながぼくのことを「Nomad」(ノマッドゥ)じゃなくて「Nomado」(ノマド)って呼んでたからなんだ(笑)
あと、宮崎駿の映画のなかに出てくるゴーストからインスパイアされたから、その名前を日本語っぽく聞こえるようにしたかったんだよ。ぼくにとって日本や日本の文化はとてもミステリアスで、だからとてもだいすきで・・・日本にもぼくの音楽を聴いてくれるひとがいるってことがとても誇らしくもあるよ。
- あなたはいま30歳で、父親にもなりました。それがアルバムになんらかの影響を与えていますか?
ぼくは『Cats and Babies』はより成熟したアルバムだったと思ってる。『No Magic』は、より遊び心があるように、エレクトロニックに作った。じぶんが年老いたなんて感じたくなかったからね。ぼくの知ってるひとたちのなかでも、子どもができて音楽を作るのをやめてしまった人たちがたくさんいるのも知ってる。父親になることはこの世でいちばんすばらしいことだけど、そのことでじぶんの音楽への情熱がなくならなかったって事実がすごくうれしいよ。
- 日本のファンへMarathon of Dopeコレクティヴについて紹介してください。
Marathon of Dopeはトム・デ・ギーター(ケイヴメン・スピーク、ズッキーニ・ドライヴ、スピード・ダイアル7)とパトリック・スケーン(ピピ・スキッド)によって運営されてる。オンライン・レーベルでアルバムはフリー・ダウンロードできるんだ。また、じぶんたちのお金を寄付することを選ぶこともできる。純然なヒップホップ・アーティストもいれば、エレクトロ・ポップやその中間もいる。ヴァラエティに富んだアーティストがそれぞれすばらしい音楽を作ってるんだ。
- 共感を感じるアーティストはだれかいますか?また、お気に入りのアルバムがあれば教えてください。
きのう、ブリュッセルでおこなわれたラディカル・フェイスのライヴにいったよ。彼の『Ghost』ってアルバムがだいすきで、新しいアルバム『The Family Tree: The Roots』も会場で買ったよ。こっちもものすごくいいね!
(インタヴュー質問:大崎晋作)
Nomad – Son, if you don’t know
Nomad新曲「Son, If You Don’t Know」ミュージック・ヴィデオ。ニュー・アルバムは来月!
2008年の2ndアルバム『Cats and Babies』以来、3年ぶりとなるニュー・アルバム『No Magic』を完成させたNomad。
そのなかから「Son, If You Don’t Know」のミュージック・ヴィデオが届きました。Nomad自身が主演/監督を務め、Tom De GeeterとPip Skidが出演。チル・ウェーヴ色のある曲調はこれまでとは違いますが、そもそもベッドルーム・ミュージックという共通点があるので、この変化はそれほど驚きはないかもしれませんね。
アルバム『No Magic』はMarathon of Dopeより12月にリリース予定です。フリー・ダウンロードなのでhueからCDのリリースはありませんが、彼のインタヴューをhueのウェブサイトで行う予定です。
Speed Dial 7 ニュー・ヴィデオ『Poker Faces II』
Zucchini DriveのTom De Geeterのソロ・プロジェクトSpeed Dial 7のニュー・シングル「Poker Faces II」のミュージック・ヴィデオ。
ニュー・アルバム『11』収録。今回はPip Skid、Nomadをフィーチャーしています。
カナディアン・インディー・ヒップホップの最終兵器Andrreの蒼すぎるデビュー・アルバム『Learn to Love』
カナダのケベックのアーティストAndrreとの出会ったのはたしか2006年のことだったと思います。
myspaceを通してぼくにコンタクトをとってきた彼は当時なんと18歳。sosoやFactorを聴いて育ったという彼の音源は、荒削りながらも間違いなく偉大な先人たちのリリカルさを受け継いだもので、ほんとうに「アンファン・テリブル」というのがぴったりでした。
その後、うたとラップの融合をコンセプトにしたhueの2作目のコンピ『Once a hue, Always a hue』(2007)を作るときに声をかけ、Pierre the Motionlessのビートによるソロ曲「Sunset And Thoughts」と、RomaとのプロジェクトAndrRomakの「Life up There」の2曲を収録しました。
それからもぼくはつねに彼に決して小さくはない期待を寄せていたのですが、AndRomakのデビュー・アルバム『Beauty is but skin deep』が出たのはすでに時代がカナダのインディー・ヒップホップを必要としなくなった感のあった2009年になってからのことでした。
昨年の3作目のコンピ『Hip Hop Hums』に収録したZoënとAndrreのコラボレーション曲「Lonely Kid」のことは以前も書きましたが、間違いなく2010年でもっとも「アンセム」という名にふさわしかったこの名曲を作り上げてくれたことで、ぼくの長年の期待に対する答えとしては十分すぎるほどでしたが、今回、初めてのソロ・アルバム、その名も『Learn to Love』を届けてくれました。
これまで彼がMilled Pavementやhueのコンピに提供した曲やAndrRomakの曲などをAndrreのすべてを詰め込んだと言ってもいい一枚。
ぼくは4年間、この作品を待っていたんだ。
時代が違えば、彼は救世主となっていたことでしょう。だけど、彼は遅すぎたのです。残念ながらこの作品が内容にふさわしいだけのポピュラリティーを得ることはたぶんないと思います。需要と供給のバランスを壊すには作品の内容だけではどうすることもできない。その圧倒的な真実を前にしてなお、ぼくはこの作品のすばらしさを伝えたい。
Zoën、Roma、Pierre the Motionlessら優秀なプロデューサーに支えられ、Nolto、Astronautalis、Nomadといったhueにとって友人たち
とも言えるそうそうたるアーティストが参加していますが、個人的には他のアーティストをフィーチャーした曲よりもAndrreのソロのほうが際立っていると思います。光り輝いていると言ってもいいでしょう。
Zoënとの「Lonely Kid」はなぜか「Learn to Hope」と名前が変わっていますが、やはりこの曲の圧倒的なカタルシス。メラネシアン讃歌のサンプリングとともに歌われる少年の叫び。何回聴いても飽きることなく、いつまでも新鮮さを失うことのないことが名曲の条件だとすれば、これは名曲以外のなにものでもない。Factorたちの「Another Tomorrow」と同等なのです。
Andrre – learn to love – Learn to hope by pdis_inpartmaint
そして、Funkenとの共作「Boys Don’t Cry」。キュアーの同名曲のAndrreなりのカバーであり、トリビュートとも言えるこの曲の爽快さ。もはやヒップホップではないけど、Andrreの音楽の決して枯れ果てることのない蒼さをもっとも表した曲だと言えるでしょう。ひとりでいくつもの声を使い分けるヴォーカルは決して表現力があるわけではないと思いますが、ひとの心をうつ「何か」を持っているんじゃないかと。
BOYS DON'T CRY – ANDRRE & FUNKEN
I can’t figure it out, I wish I was stronger
Hard times are behind so we can make it happen
Someone’s following my voice, I want to be an astronaut and fly away, away
わからないよ ぼくはもっと強くなりたいんだ
厳しいときはもう過ぎ去ったんだ ぼくらならできるさ
だれかがぼくに耳を傾けてくれる 宇宙飛行士になってこの空を飛び立ちたい
(「Learn to Hope」)
だいじょうぶ、Andrre。ぼくはきみの歌を聴きつづけるよ。
30歳を目前にしてこの蒼すぎる作品に出会えてよかったと思います。
p*dis online shopには今月の下旬に入荷予定です。
p*dis online shop : andrre – learn to love商品ページ
Marathon of Dope 1stコンピレーション!
Zucchini Driveのトムが中心となって運営するレーベルMarathon of Dopeの1stコンピレーションがリリースされました。全13曲収録でオール・エクスクルーシヴ。下記のリンクでフリーダウンロードできます。
Marathon of Dope – Compilation Vol. 1 (MOD011)
Track list:
01. Elissa P – Way to get Clean
02. Birdapres – Busy Signal
03. Pip Skid & Zucchini Drive – Chain Combo
04. Passage – Money Clip
05. Madame Psychosis – Defect
06. The Gumshoe Strut & Yy – Pandemic Fever
07. Nomad – Hajani
08. Speed Dial 7, Mike Ladd & Marcus Graap – The Plague
09. John Smith & Murdock – Eleven Eleven
10. KaeoFLUX – Nic Fit
11. Mike Ladd – Black Playmobil
12. We gots the Moneys – Inconvenient
13. Nuccini! & Bleubird – I love Small Things too
個人的に注目はやはりなんといってもアルバム製作中というNomadの新曲「Hajani」!前作『Cats and Babies』でのギター弾き語りスタイルから一歩踏み出した感のあるメロディー。このひとの存在感はやはりなんとも言いがたいですね。2ndが1stほどの評判を得られなかったことですこし思い悩んでもいたようですが、Nomadという才能はなにをやったとしてもオリジナル。ぼくは期待しています。
そしてBleubirdをフィーチャーしたNuccini!の名曲「I love Small Things too」がついに音源化!もう3年も前になる2007年の来日公演のときにNuccini!が演奏したインスト曲「Domnei des amantes」にBleubirdがラップをのせたものなのですが、これがもう震えるほどの名曲なんです。ぼくは彼から何年も前にもらったこの曲のMP3をひとりじめにしたり、ひそかにDJでかけたりもしました。傑作デビュー・アルバム『Matters of Love and Death』の次に出るアルバムはぜひhueからリリースしたいと思ってたら、もらったデモがエクスペリメンタル・ドローンで困ったというネタもいまは昔。それでもぼくはいまだに彼のプロデューサーとしての才能を信頼しています。とにかく、フリーですのでこの名曲はチェックしてもらいたいです。