個人的にベルギーといえば、シーフォとアンソールなのだけど、それは今回は関係ない。人によってはベルギービールだったり、あるいは最近はショコラ・ブームなので、ゴディバやデルレイやピエール・マルコリーニといった名前も多く挙がりそうだけど、それも今回は関係ない。そんなの人それぞれなので、ベルギーといえばshadowanimals、なんて奇特な人が1000人中1人ぐらいはいたっていいと思う。お隣のフランスに比べると、あまり脚光を浴びることはないかもしれないが、ベルギーはかなり歴史的な国で、アートもさかんなこの国に根付いた音楽は人口のわりにはかなり雑多だと言える。たとえば、u-coverとsubrosaとshadowanimalsが混在するこの国の音楽は、だからこそおもしろい。アンチコンが世界中に蒔いた種を最も理想的に咲かせたと言えるshadowanimalsというアンダーグラウンド集団は、同じ志を持ってはいるものの、そこにあまりチームワークは感じられない。みんな好き勝手やっている。いくつかユニットがあるが、リーダー格のsiazことtom(彼はcavemen speakのほか、the world after 4/02とgunpornというユニットの一員でもある)がなんとかまとめているようなかんじだ。そんなマイペースさや、ゆるさはカナディアン・ヒップホップの連中にも似ていて、むしろある意味それ以上であり、そこが何より魅力的でもあるのだ。
中心的なユニットであるcavemen speakは、siazと、彼とともにgunpornでも活動するthe homesick nomad、そしてdan&the idiotの3人からなる。すでに5枚目となる本作は、ポストロック的なプロダクションがすでにアンチコンの名を忘れさせるほどのクオリティーを有し、何より3人の個性豊かなMCだったり、うただったりが実に瑞々しい表情を見せてくれる。特にthe homesick nomaddの存在感が際立つ。shadowanimalsのほかのユニットに参加しているbleubirdやスウェーデンのstacs of staminaのmarcusはともかく、カナダからepicとjosh martinezが参加しているのも注目。どういうつながりなのかが気になるが、聴くところによると、どうやらsiazの熱心なアプローチの結果のようだ。カナダとベルギー。このかなり共通点がありながら、まったく違うふたつの国がつながっているということもきっと必然なのだろう。今後もより多くのコラボレーションが生まれることが容易に想像できるし、アンチコンの影響云々、ルーツ云々といった話を忘れさせるだけの傑作の誕生を最も予感させるナードヒップホップの傑作。(SIN)
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