広島出身のアーティスト冥丁が8月6日原爆の日にリリースするデジタル配信シングル「平和」 。彼の育った環境や平和教育の深い影響からインスパイアされた、広島の歴史と感情を巡る音の旅。
1945年、広島に原子爆弾が投下された日である8月6日の原爆の日に合わせてリリースされる本作「平和」 は、広島の人々の悲劇と復興を描いた楽曲。冥丁自身が体験し感じた感情の肝心な部分を捉え、広島に対する彼の個人的な理解を非言語領域で具現化した。
同テーマでこれまでに発表されてきた過去の音楽とは一線を画し、冥丁は独自の広い視点から広島を表現している。音楽のクオリティーと歴史を継承することの重要性を認識しながらも、人間の感覚の内面に踏み込み、音楽を通して言葉にならない感情や物の感覚的価値を伝え、 「アンビエント」 の解釈を再定義している。本作「平和」 に対する冥丁のアプローチは、歴史認識と個人的解釈を織り混ぜながら、平和への個人的な憧れを力強く伝えるのと同時に、広島に刻まれた傷跡を鮮明に表現している。
メロディーラインに巧みに質感を吹き込み表現された、かつて街に漂っていた灰のような雰囲気を思わせる哀愁を帯びた音色や焼け焦げた街の残り香。その全てが臨場感を伴う魅力的なリスニング体験へと昇華されている。
「平和」は2023年8月6日にデジタル配信でリリースされる。
また、この楽曲は2023年秋にKITCHEN. LABELよりリリース予定の冥丁のアルバム『古風 III』の先行シングルでもある。
[冥丁による楽曲解説]
当初、本曲は1945という題名だった
僕が育った町は平和教育が盛んだった
幼い頃からそれについて意識を向ける機会も沢山あった
穏やかな未来を願いながら同時に過去の悲劇を学んだ
出来事を知らない子供達は、その事実を知って大人になってゆく
昔から僕はこの出来事に意識を向けることに不気味な印象を感じていた
原爆ドームを見ながら、悲劇に基づいて絵を描くことに抵抗感を持っていた
それは私達が想像したくない未来を敢えて現実に再現しているかのような感覚だった
純然たる流れに働く論理的な大人の知性(義務)と人間の歴史が残した現実(教育)が怖かった
広島平和記念資料館のデータベースで河崎源次郎氏が撮影した1935年の広島の映像を見ることができる
原爆が投下される以前の広島の姿がここにある
これを見たときに語り継ぐものは特にないと思ってしまった
何かを訴えて伝えることを否定するつもりはない
けれども僕達はもう十分にそれを理解しているはず
1945という題名を変えることにした、平和に変えることにした
– 冥丁, 2023
【Tracklist】
1. 平和
冥丁
メイテイ
日本の文化から徐々に失われつつある、過去の時代の雰囲気を「失日本」と呼び、現代的なサウンドテクニックで日本古来の印象を融合させた私的でコンセプチャルな音楽を生み出す広島在住のアーティスト。エレクトロニック、アンビエント、ヒップホップ、エクスペリメンタルを融合させた音楽で、過去と現在の狭間にある音楽芸術を創作している。
これまでに「怪談」(Evening Chants)、「小町」(Métron Records)、「古風」(Part I & II)(KITCHEN. LABEL) などによる、独自の音楽テーマとエネルギーを持った画期的な三部作シリーズを海外の様々なレーベルから発表し、冥丁は世界的にも急速に近年のアンビエント・ミュージックの特異点となった。
日本の文化と豊かな歴史の持つ多様性を音楽表現とした発信により、The Wire、Pitchforkから高い評価を受け、MUTEK Barcelona 2020、コロナ禍を経てSWEET LOVE SHOWER SPRING 2022などの音楽フェスティバルに出演し、初の日本国内のリリースツアーに加え、ヨーロッパ、シンガポールなどを含む海外ツアーも成功させる。
ソロ活動の傍ら、Cartierや資生堂 IPSA、MERRELLなど世界的に信頼をおくブランドから依頼を受け、イベントやキャンペーンのためのオリジナル楽曲の制作も担当している。
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