Alva Noto
“Xerrox Vol.5”
アルヴァ・ノト
『ゼロックス・ヴォリューム・ファイブ』
2024年12月6日リリース
◆AMIP-0370 国内流通盤CD ¥3,190(税込)
◆N-062-2 輸入2LP ¥6,430(税込)
レーベル:NOTON
現代エレクトロニック・ミュージックの先導者である天才ドイツ人サウンドアーティスト、アルヴァ・ノトが2007年よりスタートした《ゼロックス》シリーズ5部作がついに完結!
2007年にスタートしたアルヴァ・ノトことカールステン・ニコライの「Xerrox」(ゼロックス)シリーズ。もともとのコンセプトはオリジナルよりも記憶に残る映像や音響の「コピー(複製)」を作ることを目的としていた。シリーズ名は米国のゼロックス社が1960年に商品化した電子写真複写機の商標名から始まり、現在ではコピー機やコピーのことを意味する「xerox」に由来しているが、名前だけではなく「コピー(複製)」という根本的なコンセプトにも影響を与えている。2005~2006年の最初のレコーディングから約20年に渡り、シリーズ5枚のアルバムは、アーティストの進化する視点とコンセプチュアルなアプローチに寄り添ってきた。
当初は荒々しさとホワイトノイズの中に解答を求めるコンセプチャルなフォーカスを特徴としていたが、後の作品では、音響的な粒子に重点を移しながら、”溶解”というテーマに取り組んでいる。コピーのプロセスは、現在ではソフトウェアの操作によって目に見えるものではなくなっているが、その代わりに、アーティストが作曲中にメロディや音響のイメージを描写し、操作し、コピーし、新しいパターンに変換することで展開される。
ニコライはこの進化を、ホメロスの叙事詩「オデッセイア」やネモ船長が登場するジュール・べルヌの物語との共通点を示しながら、構築、探求、解答を包含する旅と表現している。
また、このアルバムの完結は、アーティストにとっての区切りの意味を持っている。ニコライは「始まりと終わりの両方を縁取るトラックのサイクル全体を作ることを目指した」と説明する。「旅のモチーフは続くが、今回は無限への旅に出るというコンセプチュアルな目的を通して、物語は溶解に至る。Dissolution(ドイツ語で”Auflösung”)という言葉は素晴らしいコンセプトで、謎を解明するという意味もあるし、錠剤が水に完全に溶けるという意味もある。ここで、私は意図的に溶解する過程を描写している。」
Vol.5を制作するにあたり、ニコライは作曲プロセスを進化させ、サンプルを排除し、オリジナルのメロディーを採用した。「このアルバムの完成には、おそらく最も時間がかかった。最初にメロディーのスケッチを描き、それが作品の基礎となった。これらのレコーディングはすべてゼロから制作したものだ。これらのスケッチをもとに、コピー、マニピュレーション、再形成のプロセスを構築した。」近年、映画や大規模なアンサンブルを手がけた経験から、ニコライの作曲へのアプローチは、クラシックの楽器法の影響が大きくなっていることを反映している。「このアコースティックなクラシック楽器との共同作業の経験は、Xerrox Vol.5の作曲プロセスにも生かされている。一部の楽器は、オーケストラへの移植を念頭に置いて設計されている。」
“Xerrox Vol.5”の音には、非常に深い溶解の雰囲気がある。ニコライは「私は当初、強く感情的なメロディーの側面には興味がなかった 」と話している。「でも、その断片が中心的な役割を果たしていることに気づいたんだ」。この変化は、メランコリーと別れのほろ苦さに彩られた感情的な体験が反映されている。このシリーズを敬愛していた坂本龍一が亡くなったことでアルバムの感情的な響きはさらに深まった。「”Xerrox Vol.5”は別れに大きく関係している。20年近く育ててきたシリーズそのものとの別れだけでなく、親しかった人たちとの別れもたくさんあった。これらの人々のことは、音楽の中で認識できると思う。とても感情的で個人的なアルバムだ。」
リスナーは音楽に視覚的な側面を期待できるが、ニコライは意図的に解釈の余地を残している。「特定の物語を指示するのではなく、音楽が個人的な経験やイメージを呼び起こすことを好む。」と彼は言う。その結果、優しさと内省を誘う重層的なリスニング体験が生み出されている。
CDパッケージは縦18cm x 横12.5cmの特殊サイズ紙ジャケ仕様。
Track list :
1. Xerrox Topia
2. Xerrox Sans Nom I
3. Xerrox Sans Nom II
4. Xerrox Ascent I
5. Xerrox Ascent II
6. Xerrox Sans Repit
7. Xerrox Nausicaa
8. Xerrox Xenonym
9. Xerrox Ada
10. Xerrox Arc
11. Xerrox Kryogen
12. Xerrox Isotope
Carsten Nicolai(Alva Noto)
カールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)
1965年、旧東ドイツのカールマルクスシュタット生まれ。ベルリンを拠点にワールドワイドな活動を行うサウンド/ビジュアル・アーティスト。音楽、アート、科学をハイブリッドした作品で、エレクトロニック・ミュージックからメディア・アートまで多彩な領域を横断する独自のポジションを確立し、国際的に非常に高い評価を得ている。彼のサウンド・アーティストとしての名義がアルヴァ・ノトである。ソロ活動の他、ミカ・ヴァイニオ、池田亮司、ブリクサ・バーゲルト(アインシュツルテンデ・ノイバウテン)、ビョーク、イギー・ポップなど注目すべき様々なアーティストたちとのコラボレーションを行い、その中でも坂本龍一とのコラボレーションにより、ここ日本でも一躍その名を広めた。2016年には映画『レヴェナント:蘇りし者』(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督)の音楽を坂本龍一、ブライス・デスナーと共同作曲し、グラミー賞やゴールデン・グローブ賞などにノミネート。また美術の分野においては2015年8月より西武渋谷店エントランスに『chroma actor』が展示されている。2017年3月には市原湖畔美術館にて大規模な個展『Parallax』が開催された。現在はドレスデン美術大学でデジタル&タイムベースト・メディア専攻の教授を務めている。
Photo by Andrey Bold