モダン・クラシカルの元祖ヨハン・ヨハンソン
陶酔の美を極める桃源郷のサウンドトラック

デンマークの映像作家Max Kestnerによるコペンハーゲンについてのドキュメンタリー映画『Drømme i København (Dreams in Copenhagen)』(2009年)のサウンドトラックとして元々製作されたもの。近年はオーケストラとともに作った作品が多かったですが、本作はストリングス・カルテット、クラリネット、チェレスタ、キーボード、そしてエレクトロニクスというより小編成で作られました。近年隆盛をみせるモダン・クラシカルと呼ばれる作風をいち早く取り入れた2002年のソロ・デビュー作『Englabörn』におけるミニマルな静寂のサウンドをよりメロディアスにし てエレクトロニカ的要素を多めにしたような内容。

物理的存在としてのコペンハーゲンという街にフォーカスを当て、この街が持つポエトリーやスピリットのようなものを映像で切りとろうとしたこの意欲的なドキュメンタリー映画において音楽は非常に大きなパートを担っており、様々な街の表情を映すようにヨハンソンの音楽も時にシンプルに、時に静謐に、時に華麗に、しかし一貫したリリシズムで鳴り響きます。特にチェレスタが随所にノスタルジーを加え、シンセがドリーミーさを与える洗練な美を極めた本作は、ヨハンソンの数々の作品のなかでも屈指の出来と言えるでしょう。キース・ケニフ『Branches』とダスティン・オハロラン『Lumiere』を合わせたような名作です。

なお、本作はヨハンソン自身のレーベルNTOVからLPとダウンロードのみでリリースされ、CDはアイスランドのみで限定盤がリリースされていました。

 

<Track List>
01. Eleven Thousand Six Hundred and Sixty-Nine Died of Natural Causes
02. They Leave Everything Behind
03. They Fed the Sparrows Leftovers and Offered Grass to Scherfig’s Turtle
04. An Eiffel Tower by the Lakes
05. Three Thousand Five Hundred and Ninety One Benches
06. The Jewish Cemetery on Møllegade
07. They Dream They’ll Get There
08. A Memorial Garden on Enghavevej
09. A Six-Lane Highway
10. He Hit Her on the Head with “The Wind in the Willows”
11. He Says it’s the Future
12. There’s No Harm Done
13. They Had to Work it Out Between Them
14. The Song about the Hyacinths
15. It Will Take Some Time
16. She Loves to Ride the Port Ferry When it Rains
17. A French School on Værnedamsvej
18. Here, They Used to Build Ships
19. They Imagine the City Growing out Into the Ocean