コンセプト力強い電子音楽から、熱を発する
フリーなインプロ、追求していく現代のテクノへ、
世界をみても他にないレーベル〈Entr’acte〉。
そのレーベル作品を日本に伝えるべく、
あらたに始動した〈きょう Records〉へ
〈スローダウン Records〉より移行しました。
トータル第6 弾はDominic Thibault!
本作は「ポスト・アクースマティック・ミュージック」を提唱するモントリール在住の電子音楽家Dominic Thibault が、〈Entr’acte〉からリリースしたアルバムである。彼はTout Crocheというノイズ・ユニットとしての活動や、〈Silent Howl〉という電子音楽レーベルの運営など、多様な「リゾーム」的な活動を展開してきたが、このアルバムでは彼本来の仕事であるミュージック・コンクレート/ノイズを正面から追及。収録された8曲については「砂漠の動きに触発された」と語られており、「純粋さとシンプルさを求める預言者の旅/自己拒否によって自発的な償還を得るための小切手」というメッセージも発信されている。2013年7 月から2015 年2 月にかけて作曲され、ストリングス・バージョンも存在する。
ともあれ、この砂の粒子を思わせる鋭いノイズ音響は繊細にして強烈である。電子音を完膚なきまでに変形・構築・記録することで、新しいノイズ/ミュージックを生成しているのだ。ピエール・シェフェールのいう「音が、その発生の状態を見ることなく聴く状況」=「アクースマティック・ミュージック」を現代のテクノロジーで実践する音響作品といえよう。マスタリングはJacques Beloeil – デンシノオト
Track List :
1.to *obey
2. to *contemplate
3. to *desire
4. to *abide
5. to *believe
6. to *seclude
7. to *peter out
8. to *negate
Entr’acte
2005年から本格的な出版がはじまったベルギー拠点のレーベル。初期はノイズや実験音楽をリリースし、現在ではJoke Lanz (Schimpfluch)、DanielLöwenbrück (Tochnit Aleph)、Lee Gamble (Pan)、Strategy (Further、100%Silk)、Giuseppe Ielasi (Senufo Editions)、Dennis Tyfus (Ultra Eczema)、Sam Kidel (The Death Of Rave)、Imaginary Forces (Halcyon Veil)など、コンセプト力強い電子音楽から、熱を発するフリーなインプロ、追求していく現代のテクノといった、自らの実験精神を突き進む多彩な顔ぶれがそろう。これらが違和感なく並ぶのは、白く統制された美しいアートワークでパッケージになっているからだろう。デザインは主催者も兼ねるAllon Kayeによるもの。アンダーグラウンド愛ある先見性と質の高さは世界を見渡してもほかにない。いまの「エクスペリメンタル」を考えるなら外すことはできないレーベルである。